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急成長スタートアップでデザインチームを孤立させない4つの方法

この記事はInVision app社のDesign Educationで副代表を務めるAarron Walter氏のブログ記事を公式に許可をいただき翻訳したものです。


トムは途方にくれていた。会社はこの4年間ですさまじい成長を遂げて、もはや自分が加わった当初のようなボロボロのスタートアップではなかった。最初の数年は、デザインについてフィードバックが必要なときは、ただ自分の椅子を同僚のデスクに移動させていた。チームで協力して仕事をすすめ、フィードバックも迅速だった。自分の仕事についてみんなが分かっていて、尊重されていた。楽しかった! ヘッドホンを着けて、全神経をデザインに注ぐことができた。

それから状況は変化した。

製品も会社も成長した。瞬く間に。彼は自分のチームを築いた。彼の同僚もそうだ。新しく採用したメンバー全員が入るように、今よりも広いオフィスに移った。いつの間にか彼のデザインチームと他の部署との間に物理的かつ心理的な距離ができていた。彼のチームがつくったデザインは常に人々の注目を得られるとは限らなかった。その結果、関係者は彼の仕事の価値を理解しなくなっていた。

似たようなことを聞いたことがある? このシナリオは成長中の企業のほとんどに共通するものだ。かつて透明性があり、製品開発の過程に組み込まれていたデザインがブラックボックスになり、エンジニアや利害関係者から孤立し、誤解されたり無視されるような危うい立場に置かれてしまう。

デザインは見えないと、それはもはや力を持たない。

小さな会社であれば、デザインをさくっと見てほしいと同僚に頼めば、プロジェクトの状態を簡単に把握することができる。大きな会社では、デザインについての会話が自然に起こることは稀だ。デザインは役員や開発者から切り離されている。構想が利害関係者全員の前で明かされるまで、デザインが守られていることが多い。この段階で率直なフィードバックを与えるのは手遅れだ。的外れなデザインに対して既にかなりのエネルギーと感情が投資されているため、利害と反動があまりに大きくなっているからだ。

デザインにとっては危険な状況だ。プロジェクトがスムーズにいかなくなり、デザイナーがよりやりがいのある別の仕事を探し始めるきっかけになる。もちろん、その害を被るのはデザイナーだけじゃない。最高の仕事を提供できない企業は、ポテンシャルを生かしきれない、社員の満足度を下げるというリスクを負う。

だが、こんな状態に陥る前にできることはある。

大きな組織の中でデザインをつなぐ

会社が成長するにつれて、誰もがより懸命に、そしてよりスマートになるべきことがある。コミュニケーションだ。大きな組織で成功するデザイナーは、組織のいたる部署の同僚と仲間意識を築いて社会的資本をつくっていくものだ。

必要な社会的資本をつくるためには、コンピュータから離れる習慣をつけるべきだ。あなたの次のデザインを開発するかもしれない開発者とランチをしてみよう。トピックは必要ない。ただお互いを知ることだ。消費者の意識をしているリサーチャーと、頻繁に依頼を受ける営業と、スケジュールと全体図を理解しているプロダクトマネージャーと、ユーザーが一番苦労している部分を知っているカスタマーサービスの担当者と、時間を過ごしてみてほしい。それらすべてから、価値の高い背景を学べるだろう。誰もがあなたの仕事の成功に影響を与え得るのだ。

そして、ただ横のつながりを築くのではなく、様々な利害関係者や役員とも時間を過ごして、彼らの役割と期待を理解しよう。会社のより大きな戦略について質問してみよう。会社のビジョンに適した製品をデザインするには、俯瞰的な状況を理解しなければならない。

他のチームの同僚とのつながりを築いていけば、あなたのデザインについて知られるようになるだけでなく、あなたの仕事とのつながりができ、デザインが全員の関心となるだろう。

仕事を外部のフィードバックにさらす

早い段階で利害関係者をデザインの過程に巻き込むこと、そして頻繁にフィードバックと新鮮な見方を得ることは重要だ。デジタルで仕事を共有すれば、特定の人からフィードバックを集めるのは簡単かもしれない。だが、予期せぬフィードバックが得られるような仕組みをつくることも重要だ。画面を印刷して、通りかかる人の目に触れやすいスペースに貼ってみると、驚くべきことが起こる。ポストイットとペンも近くに置いてみて、なにが起こるかをみてみよう。私はこの方法で、期待していなかった人からすばらしいフィードバックを得ることができた。

デジタルとは違って印刷物は長く置かれるし、カジュアルなものだ。あなたが近くにいないときも、自然な参加がうながされる。その点こそ印刷物の最大の強みだろう。

誰もがデザインに触れられるとき、その過程は全ての人を受け入れるものになる。

デザインというのは、その過程の外部にいるとみなされている人々が除外されていることが多い。意図的になされることもあれば、無意識であることもある。これは残念なことだ。職場で一緒の交流グループにいないという理由だけで除外されている専門家がいるケースも多いからだ。有用なフィードバックを残してくれた人の名前をメモして、次回のデジタルプロトタイプを共有する際には彼らを巻き込んでみよう。

デザインレビューを定期的に設定することは、デザインチームがチーム内で状況を共有するだけでなく、他のチームとのつながりを強化する上でも最高の方法だ。ヘルステック企業Counsylのローラ・マティーニは、自分のチームが新しい視点を得るために、そしてデザインを周囲の人の心に据え付けるために、デザインレビューにエンジニアや役員を呼ぶという習慣をつくった。

「社内で影響力をもつ人を自分のチームのデザインレビューによく呼びました。私たちの仕事が常に見えるようにするためです。チームは仕事の状況を会社のリーダー層に早い段階で見せることについて緊張していましたが、私はそれが重要なことだと分かっていました。」

MailChimpのデザインディレクターのトッド・ドミニーは、デジタルのプロトタイプを共有することはチームの仕事に対する評価を得る上で重要であると理解しいましたが、顔を合わせてのデザインレビューは、会社が大きなコンセプトを把握する上でさらに効果があることに気付きました。

「デジタルなツールとデバイスも便利ですが、対面によるコミュニケーションに勝るものはありません。デザイナーが仕事の状況を共有し、自分の管轄外で起こることにさらされる機会をできるだけ頻繁に(邪魔にならない程度に)設定するべきです。」
トッド・ドミニー、MailChimpのデザインディレクター

変化を生み出す

会社が成長する過程でもがくのはデザインチームだけではない。すべてのチームが直面することだ。コミュニケーションを容易にしていた要因であるスタートアップ時代の上下関係のない組織やあいまいな役職は捨て去り、企業においてはしっかりと定められた組織図と各分野の専門家を置く必要がある。急速に前進する組織がレールを外れないために。

物事は変化しなければならず、私たちもまた同様だ。

ピクセルを調整する以上のことをする必要がでてくるだろう。コミュニケーションを学ぶ必要もある。デスクで過ごす時間を減らして、より多くの時間を同僚との会話に使おう。大きな影響力のあるデザインを実行するには、強固な関係性が必要になる。

「影響力のグラフは、どれだけ多くの人と効果的に仕事をする必要があるかに比例します。この点に気付いてから、周囲の人とのコミュニケーションについての捉え方が変わりました。競争に勝つことや自分の正しさを証明することはもはや意味をなさず、より強固で協力的な関係性を築くことが重要だと気付いたのです。」
ジュリー・チョウ、FacebookのプロダクトデザインVP

デザインを孤立させ、その力を奪うブラックボックスは、あなたにゆっくりと近づいてくるだろう。ブラックボックスに会社を支配させてはいけない。デザインを向上させ、より良い製品を開発したいのであれば、今すぐにあなたの仕事を外部にさらそう。以下は、あなたがするべきことだ。

  • より早い段階で、頻繁に共有する
    チームのカレンダー上にデザインレビューの日程を設定し、誰でも参加できるように招待しよう。
  • ネットワーキングをして、社会資本を築く。
    組織図は名前リストではない。潜在的な仲間の集まりだ。彼らについてもっと知ろう。
  • オープンかつ近づきやすい存在になる。
    公共の場であなたの仕事を投稿しよう。会社のコーヒータイムで、自分の仕事についてプレゼンしよう。自分の仕事について話し、会社のSlackチャンネルで質問に答えよう。
  • 各段階ごとにフィードバックを引き出す。
    デザインはデザイナーだけのものではない。良いアイデア、そして建設的な批判はどこでも得ることができる。

原文: When Design Becomes a Black Box
翻訳者: 佐藤ゆき

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