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「サービスデザイン」ってなんだろう?Xデザイン学校の日本ステージに参加して改めて考えてみた

rootの岸です。

1月末にXデザイン学校の主宰するワークショップ『2019年度サービスデザイン・ワークショップ:Vol.2 日本ステージ』に参加してきましたので、その様子を報告します。

前回のブログはこちら
文化がデザインに与える影響を学ぶ。Xデザイン学校主宰「サービスデザインワークショップ」感想

MaaSで移動体験を変えようとする西鉄とトヨタ九州の講義

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(画像:トヨタ九州が解説したコワーキングスペース「Garraway F(ギャラウェイエフ)」で講義が行われました。 - Garraway F公式ウェブサイト https://garrawayf.com/)

Xデザイン学校は、ユーザー体験や人間中心設計、デザイン思考、サービスデザインなどを基礎とした、デザインの学びと研究を推進する団体です。今回のワークショップは福岡市で行われました。初日は西日本鉄道、トヨタ九州からの講義でスタート。それぞれの会社のもつ課題とビジョンについてのお話を伺いました。

この2社はMaaS戦略の実現に向けた協業を行っており、「自動車メーカーが直接関わるMaaS」として注目を集めています。

2018年11月より、福岡市で「my route(マイルート)」というアプリを用いた実証実験が行われています。このプロジェクトでは、マルチモーダルなルート検索や店舗・イベントの紹介による動機づけ、アプリからの予約・決済といった手法により、シームレスな移動体験の提供を目指しています。先の2社を筆頭に業界を横断して様々な会社が手を組み、社会に実装するための取り組みが行われています。

それぞれの講義の中でMaaSのポテンシャルとして挙げられていた中に『「移動したい」を増やし、街のにぎわいを創出する』というものがありましたが、今やMaaSを語る上では、移動の範疇を超え、移動される土台である街そのものについて、そのあり方を議論していく必要があります。

街にダイブして、天神のフィールドワーク

夕方からは明日のワークショップに向けたフィールドワークのため、天神地区へと足を運びました。我々のチームは台湾の方が1人、福岡の方が2人、東京から参加したのが私含め2人という構成でした。

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(画像:天神のビブレ)

福岡市の天神地区は2015年から「天神ビッグバン」と呼ばれる再開発が行われており、多くのビルの建て替えが行われています。あと数年もすれば、天神の景観は変わっているかもしれません。(実は大学生の頃福岡にいたのですが、天神のビブレがなくなってしまうことに少し寂しさを覚えています。)

私たちは2時間ほどのフィールドワークとインタビューを行い、そこで得られた事象を地図上にプロットしました。そして天神とそれ以外の地区に見られる、人々の過ごし方の共通点を発見し、その共通点を軸としたユーザーの分類を行いました。さらにその分類の中でもポテンシャルがありそうな「職場と家を行ったり来たりするだけの人」を対象にしたサービス作りを目指すことを決めました。

そんなこんなで夜はふけ、具体的なサービスの話へと入ろうとするあたりで1日目は時間切れ。福岡はどういう街なのか、そこにあるべき姿はどんなものなのか、どうすればそれが実現するのかなど、深い話が続く濃密な時間を過ごしました。

公共サービスの新しい形に挑戦するLINEと福岡市の取組

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(画像:LINE Smart City Fukuokaウェブサイト - https://linefukuoka.co.jp/ja/project/smartcityproject/)

2日目はLINE福岡での講義からスタート。福岡市とLINEの連携についてのお話を伺いました。LINEと福岡市の連携は2016年より始まり、現在では様々な機能が実装されています。

例えば、粗大ゴミの受付や、道路や公園の壊れた箇所の通報などがLINEから行えるようになっています。これにより、街の人たちがより便利・快適に暮らせるようになっただけではなく、福岡市職員の作業負担もかなり減少していることが報告されています。

その他にも公共施設へのLINE Pay導入やドローンを利用した新たなサービス開発など、数多くの施策が実験され、プラットフォーマーと連携することで出来上がる公共サービスの新しい形が、福岡市では実現しつつあります。

抽象度の高い言葉に対する認識をあわせる大切さを学んだワークショップ

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(画像:ワークショップに用いたホワイトボード。)

LINEと福岡市の講義のあとは、初日のワークショップの続きです。1日目はフィールドワークを行い、そこから得られた洞察を元にしてターゲットを定めました。2日目では、主にそのインタビュー結果をさらに深堀り、「スマートシティ」というお題にのっとった課題設定と、解決策の提案が目的となります。

台湾で開催された前回のチームは、半数以上が台湾から参加の方でしたが、今回は日本から参加する人が多かったこともあって、ついつい日本語でのコミュニケーションが増えてしまいました。議論を進めるうちに、台湾人の方とのやりとりにおいて、「価値」や「サービス」という言葉についての認識のずれから、意思疎通が難しくなる場面が多々ありました。これは普段の業務においても起こりうることですが、このような形で顕在化することは少ないかもしれません。

重要かつ抽象度の高い言葉については、都度都度その認識があっていそうかどうかに気を配る必要があります。一方でフレームや図といったものは、そうした言葉の意味を補強するのにも役立ちますので、喋るのと同時に手を動かして、アウトプットによってお互いの目標や現状を色々な表現方法で確認・整理する、というのが有効なパターンであることを、身体を通して理解できました。

共創の場においては、喋るだけではいけません。お互いのコンテクストが違う分、言葉以外の色々な表現方法でそれぞれの差異を確認しあうプロセスが大切です。このプロセスをうまくファシリテートできるようになるのも、デザイナーの職能の一つなのだろうと思います。

そして議論を進めるうちに、なんとか終着点に向けてのフレームを用意して、穴埋め式に議論の発散・収束を繰り返して、成果物へとたどり着くことができました。最終成果物は90秒程度でプレゼンテーションができるようなフォーマットを用いた発表という、とても厳しいものでした。喋る内容は、増やすよりも削る方がずっと難しいですね。

最終的には、テーマであったスマートシティ的な提案にまで練り上げることができず、かつ不勉強のために既存のサービスに近いものを提案してしまうことになったのですが、言葉すら通じるかどうかわからないチームにおいて、時間内に一定の結果を出すという非常に厳しい制約は、普段の業務では得られない、思考というよりむしろ身体的なトレーニングの機会を提供してくれました。

改めて考えた、「サービスデザイン」とはなにか

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今回のワークショップへの参加を通じて、サービスをデザインするってどういうことなのかを改めて考えさせられました。私はこれまでサービスは「人がある特定の状態を目指して利用する一連の手続きとか行動」というイメージを持っていました。

しかし、それはサービスを一般化した説明にすぎず、サービスデザインという文脈においては、サービスは「ビジネスとユーザーの間を繋ぐもの」という定義の方がより適切です。要するに私にはビジネス側からの視点が足りていなかった訳です。

ビジネスとユーザーという2つの要素で捉えたとき、両者の力関係を測ることができます。例えば、車は「車の販売」というドメインにおいて、サービス側にやや偏った構造を持っていたと言えます。なぜならば、車の所有を叶えるための方法が、ユーザーから見ると限定的で、制約の多い物だからです。車は高い買い物である上に、大抵一つしか所有できません。

その歪みを解消するために考えられるのは、車のサブスクリプションなどです。つまり「車の販売」と「車の所有」の間に新たなパスを通すイメージです。なお、歪みを解消する方法は、もちろん新しいパスを通すだけではありません。ユーザーの目的を「移動サービス」に置き換えると、そこにはまた違った解答がありえるはずです。

このようにサービスの骨子となるコンセプトを考える上で「ビジネスとユーザー体験のバランス」という見方からは色々な発見が得られるような気がしています。

私たちデザイナーは何かと何かを繋ぐために、色々なことをしているのだ、ということを改めて思い知らされた2日間でした。
Xデザイン学校、並びに本ワークショップに参加されたみなさん、このような機会をいただき、本当にありがとうございました。

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