サービスのオペレーションを改善し、お坊さんの手配に必要な時間を1/120に改善
〜顧客体験を向上させながら、事業をスケールするための解決策を導くデザインアプローチ〜
株式会社よりそう(以下、よりそう)は「ライフエンディングサービス」をワンストップで提供する、急成長中のベンチャーです。2019年8月には総額20億円の資金調達を行い事業成長を加速させています。
同社からの相談で、法事などでお坊さん便を利用されるお客様とお坊さんの手配オペレーションを改善しマッチングの精度や顧客満足度の向上をサポートしました。
サービスデザインでアンケート回収率100%を目指す。僧侶手配サービス「お坊さん便」の事業成長貢献の裏側
ご相談いただいた時の状況
ご相談いただいた際、よりそうが抱えていた課題は、お坊さん便のスケーラビリティでした。それまでのオペレーションでは、お坊さんを手配するために繰り返し日程調整の電話をかける必要がありました。そのため、依頼件数・お坊さんの増加にあわせてコールセンターには日に日に負荷が高まっている状態。
お坊さんの手配コストを最小化できないと、登録するお坊さんの増加や手配件数の増加によってどうしてもコストが上昇してしまいます。依頼件数の増加によるコスト増は手数料収入でカバーできますが、お坊さんの増加によるコスト増は避けたいというのがクライアントの要件でした。
お坊さん手配コストを最小化するにあたって手配フローを自動化したいと考えていたものの、お坊さんのITリテラシーが低いことが予想されるため、どのような手段で自動化すべきかが懸念点でした。課題は明確でしたが、解決策を考えるための仮説が不確定という状態から始まりました。
課題に取り組んだプロセス
クライアントとroot間の業務に対する認識を揃える
まず、私たちはお坊さん手配というドメインについての知識を得ることから始めました。お坊さんとコールセンターのやり取りや、お坊さん自身の特性・置かれている状況・振る舞いについてインプットすることを重視。また、インプットで得た情報についてはクライアントとも共有を行い、認識を揃えていきます。
属人的になってしまっている部分についても把握するため、お坊さんの情報を持っていると想定されるコールセンターのスタッフやお坊さんへの営業スタッフをチームメンバーにお呼びし、毎週ディスカッションやワークショップを行いました。これまで属人的で専任担当者以外が把握していなかった業務についても共有され、プロジェクトチームの目線を揃えることができました。
顧客視点と現場視点を両立する仮説の立案
仮説立案にもワークショップを実施しました。僧侶・顧客・現場のそれぞれの観点や開発上の観点を集めて検討。そこで出た案の中でも有効性の高そうな「自動電話応答」「Webフォーム」「LINE」の3つの仮説にしぼりました。
プロトタイプを用いた仮説の検証
仮説からプロトタイプを作成し、お坊さんに体験してもらうことで検証を行いました。どんな解決策ならお坊さんでも操作できるのか。さまざまなタイプのお坊さんでも利用可能な自動化手段とはなにかを明らかにしなければなりませんでした。
検証の結果として、LINEの公式アカウントを活用したマッチング機能の開発が、抱えている課題を最も解決する手段であることを導き出しました。お坊さんへのインタビューや定量調査の結果からも、お坊さんには情報リテラシーが十分にあることがわかり、判断を決定づけました。
解決のアプローチ
業務理解のためのサービスブループリント作成ワークショップ
業務フローを理解するため、業務に関係するスタッフ全員を集めてサービスブループリント作成ワークショップを行いました。サービスブループリントを用いることで、解決策の糸口を見つけるための客観的な視点を得られます。
アイディエーションワークショップ
ユーザーとのタッチポイントについてアイディアを自由に出し合う、アイディエーションワークショップを開催。ユーザーをより深く理解しているメンバーと一緒にアイディエーションを行うことで、筋の良い解決策が発見できました。
ユーザビリティテスト
ユーザビリティテストは、解決策についてある程度具体的なアイデアが出ている状態で、操作性やユーザーの情報リテラシーが不明なときに実施すると効果を発揮します。ユーザビリティテストを実施し、その様子を観察したことで最も効果的な解決策を発見しました。
プロセスから生まれた成果
これまでのお坊さんとのコミュニケーションは、電話もしくはFAXで行っている状態でした。そこからLINEアカウントを用いた新たなお坊さん手配フローにより、手配に必要な時間を1/120にまで改善。開始当初からカバー率は80%を超え、多くのお坊さんからスムーズに受け入れてもらうことができました。
プロジェクトメンバーとクライアントからのコメント
チームメンバーにはお坊さん手配業務にかかわるあらゆる領域からスタッフが集まりました。その結果、必要な情報はその場にいる誰かが必ず答えを持っていてすぐに解決できるか、または検証が必要であるということが即時に判断できました。また複数実施したワークショップにも好意的に参加していただき、非常に共創的なプロジェクトチームで取り組むことができました。
お寺という伝統的な世界にはアナログな部分が多く残っていますので、一定の反発は覚悟していました。しかし、開始当初からカバー率は80%超となり、多くのお坊さんにスムーズに受け入れていただけました。rootが最適な検討プロセスを導いてくれたおかげです。UXは、最終的な成果に直結するものだと改めて感じました。
お坊さん手配事業部 部長 兼 広報・PRグループ マネージャー 小野敬明さん