西村 和則
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顧客価値から、事業の意思決定を動かすー デザインとビジネスの間を行き来する挑戦

こんにちは。root CEOの西村です。

2025年もまもなく終わりを迎えますが、今年もこの1年の活動を振り返りながら記事を書いています。

この1年、私たちrootが最も注力して挑戦してきたテーマについて、触れていければと思います。

root はこれまで、デザインを起点にした各社の事業成長支援を行ってきました。

ユーザーを理解し、体験を設計し、プロダクトやサービスの価値を形にする。

その重要性は、今も変わっていません。

ただ、この1年、明確に変化を感じることがありました。

それは、顧客価値をただ、つくるだけでは、事業は成長しないということです。

従来のUXデザインやプロダクトマネジメントは、その仕組みや設計精度を上げる取り組みが日々行われています。クライアントからの評価が高く、ユーザーからの反応も良い、という事実が積み上がる場面も多くあります。

それでも、事業の成長に直結しないケースがある。

問題は、顧客価値そのものを設計する精度を上げることではありませんでした。

顧客価値と、事業の意思決定、そして求められるビジネス成果がうまく接続されていない。

支援を行っていく中で、これが明確なギャップだと気づいた1年でした。


rootが考える「顧客価値づくり」とは何か

ここで言う「顧客価値づくり」とは、単にユーザーにとっての体験を良くすることでも、満足度を上げることでもありません。

顧客の体験や行動を起点に、事業として投資や意思決定に“賭けられる形”にまで落とし込み、意思決定に使える状態にすること。

それを、rootでは「顧客価値をつくる」と定義しています。

その体験によって、

  • ユーザーの行動はどう変わったのか
  • その変化は、事業指標のどこに影響しているのか
  • 継続率や収益、再現性のある仕組みにつながっているのか

ここまで落とし込めて、初めて

顧客価値をつくる活動は「事業で使える武器」になります


顧客価値と事業成果は、どのようにつながるのか

顧客価値づくりと事業成果は、自動的につながるものではありません。

その間には、明確な橋渡しが必要です。言い換えると、「デザインとビジネスを行き来する“翻訳” 」が必要になります。私たちが行っているのは、シンプルに言えばこの往復です。

  • ユーザーの体験や行動を設計・定義する
  • その変化が、どの事業指標に寄与しているかを仮説として置く
  • 指標とユーザー行動の変化を見て仮説を疑い、仮説に基づいて体験を再設計し、指標を改善する

たとえば、

  • この体験は継続率に効いているのか
  • それともオンボーディングの通過率なのか
  • LTVを押し上げているのか
  • 営業やCSの工数を減らしているのか

といった、ユーザー行動とビジネス指標を行き来すること。

この反復の中で、表面的な要望ではなく、事業として意味を持つ指標の特定と、ユーザーの行動実態が浮かび上がってきます。

定性的なユーザー行動だけを評価・改善するのではなく、事業指標を踏まえ、意思決定とビジネス成果まで含めたイテレーションを回せる環境をつくっていくことが必要です。

そして、この「指標とユーザー行動のつながり」を紐解き、組織内にアセットとしてノウハウを貯めていくことが、競争優位性にもつながっていくと捉えています。


目標設定こそが、顧客価値とビジネス価値をつなぐ結節点

ここまで触れてきた考え方を組織の中で運用するためには、目標設定にアプローチすることが最もインパクトが大きい、ということもわかってきた1年でした。

rootでは、クライアントとの取り組みを事業計画やクォーターの計画に合わせて、目標設定をするプロセスが存在します。

これは、クライアント組織が持つ事業目標や開発計画に対して、顧客価値を起点とした状態定義を行い、デザイン活動の目標を明確にする営みでもあります。

結果的に、この目標設定によって活動の進捗や成果評価は、通常の事業活動における目標評価と同じように、デザイン活動も評価対象として振り返られる形になります。

この「目標設定」と「振り返り」の仕組みを導入していくことが、顧客価値を事業指標と接続し、事業のありたい状態に対して「顧客価値をどうデザインしていくか」をアラインすることにつながっていきます。

目標と聞くと、KGI/KPIのような数値指標を思い浮かべる方も多いと思います。

でも本来、目標とは定性的に“あるべき状態”を言語で定義するものです。会社の目標をGMV◯◯やUU数◯◯といった「指標」そのものだと捉えている方もいるかもしれません。

重要なのは、その指標(GMV◯◯、UU数◯◯)を達成した状態とはどのような状態なのか、という点です。

事業活動を営む上で、指標の成長は「顧客に対してより大きな価値を提供できている」ことの証明でもあります。

つまり、目標指標に対して顧客を主語にした状態の定義を置くことが、顧客価値をどう提供するかの基準になります。

しかし、多くの組織ではこの目標に対して、顧客を起点とした状態定義がされていないケースが大半です。

デザイン組織がある企業であっても、組織目標に事業指標と連動した顧客状態が設定されないまま、事業活動が行われている場面もよく見ます。

「デザインは定量評価できず曖昧だから、事業成果にダイレクトにつなげられない」——そう捉えられていることも多いのではないでしょうか。


これからのデザイナーとPdM、それぞれに開くrootでの挑戦機会

この取り組みは、デザイナーとPdMに、これまでとは違う視点を求めます。

デザイナーにとって、ビジネス指標や収益構造は「デザインの外側」にあり、自分たちには関係のない領域だと捉えられがちです。

でも、その構造を理解すると、ユーザー体験の意味は変わります。

ユーザーにとって価値のあるものをつくりたい。事業を営み、ユーザーにその価値を提供し続けるためには、ビジネス価値や収益構造があってこそ成立する。決して対立構造で捉えるものではありません。

ユーザー行動と事業成果をつなぐ視点を得ることで、デザインのアプローチは、よりダイレクトに事業へインパクトを与えられるようになります。

一方でPdMにとっても、異なる視点が求められます。

プロダクトの中だけで意思決定をしていると、顧客価値はどうしても閉じたものになります。実際の顧客体験は、マーケティング、セールス、CSまで含めた事業全体の中で成立しています。

プロダクトの外側まで視野を広げ、顧客価値を起点にビジネスを横断して捉えることで、PdMはプロダクト管理者から、事業と顧客をつなぐ結節点となり、事業を牽引する役割へ踏み出すことができます。

たちrootでは、こうしたPdMがクライアントを支援するケースもあります。rootが強みとしている、スタートアップの創業期や新規事業の立ち上げ期に関わる利点は、この全体像を掴みやすい点にあります。そこから事業を育て、プロダクト組織を顧客起点で発展させていく継続的な支援を担えることが、1つの挑戦にもなっていきます。


rootでは、実際に成長支援をどのように行っているか

この考え方を実践的に体現しているStarley社との取り組みである「Cotomo」のプロダクト開発について少しお話しできればと思います。。

Cotomoには創業期から私自身も関わり、ユーザー起点での体験設計・プロダクト設計だけでなく、事業戦略やビジネスモデルの検証までを一体で進めてきました。

最初から答えがあったわけではありません。

  • 誰の、どんな課題に向き合うのか
  • おしゃべりという雑談領域で、何が顧客価値として選ばれるのか
  • 継続される理由はどこにあるのか
  • どのようなビジネスモデルが成立するのか

事業指標は見えていても、ユーザー行動のどこに手を入れるべきか、曖昧な状態が続いていました。

そこで重視したのは、体験を磨き込むこと以上に、顧客の行動実態を徹底的に見ることでした。

どんな瞬間に会話が続くのか。

どこで離脱するのか。ユーザーが最も熱狂するタイミングはいつなのか。

ユーザーにとって、熱狂するほどの価値は何だったのか。

その結果、指標から紐解いた改善や施策立案だけでなく、ユーザーにとって価値あるコンテンツをどうつくっていくか、という再定義にたどり着きました。

この顧客価値の定義が定まったことで、プロダクトの判断軸、投資の優先順位、次に試すべき施策がまとまっていきました。

創業期から続けたこの取り組みによって、組織における顧客価値の重要性は圧倒的に高まりました。

新しい機能やプロダクトを考えるとき、まず議論されるのは機能要件ではなく、ユーザー体験から事業をどう動かすかに変わったのです。

この組織基盤を最初につくる営みこそ、rootが関わる意義だと思っています。

※2025年11月 ユーザー数200万人突破!

rootにおけるデザインとは何か

rootが考えるデザインは、ユーザー体験やインターフェイス設計に閉じたものではありません。

  • 事業本来の価値をユーザーに届けること
  • 成長していく事業の中で、その会社・事業の芯を共に見出し、アイデンティティを形づくること

この2つを行き来しながら、顧客価値から事業価値をつくり出すこと、です。

そして、1つの事業・組織を形作る営みを共創し、育てていくことを、ひとつのデザイン行為として捉えています。

デザイン会社が事業成長を支援する。これを体現するための1つの切り口であり、ここに再現性を持って支援を担える組織を作っていくことが、未来ある事業を通じてデザインで社会に貢献すること、そしてデザインの可能性を広げる1つの道になるのではないかと考えています。

組織の右腕として、共に事業価値を創り、育むデザインパートナー。

これはrootのコアバリューそのものであります。


顧客価値づくりから事業成長に関わるここからの挑戦

この取り組みは、簡単なものではありません。正解が最初から見えるものではなく、クライアントと共創しながら日々事業の成長にコミットすることで、見いだせるものが多くあります。

そんな中で、自身が「顧客価値をつくり、事業価値をつくること」に責任を持ち、

  • 顧客価値を起点に事業を動かしたいPdM
  • デザインの上流で、責任ある挑戦をしたいデザイナー

にとって、確実にキャリアを広げる1つの挑戦になるのではないでしょうか。

rootは、デザイン会社でありながら、デザインを極める会社ではありません。

顧客価値から事業を育てられる会社でありたい。

支援する会社それぞれが僕たちにとってのポートフォリオであり、その成長を各社の組織の右腕となり、共に支援してきたと胸を張って言えるだけの事業成果を、1人ひとりのデザイナーと共につくっていきたいのです。

来年も、様々な挑戦が待ち受ける1年になりそうですが、顧客価値をつくることから、1つでも多くの事業を共に育てられる1年になるよう、rootも成長していければと思います。そんなrootに、少しでも興味のある方は、ぜひ、カジュアルにお話しできれば嬉しいです。

(YOUTRUST_ 西村の募集)

最後に、今年1年お世話になったクライアントのみなさま、一緒にプロジェクト支援をしてくれたコラボレーターのみなさん、そして組織を共につくってくれているメンバーのみんな。

一緒に歩んでくださり、本当にありがとうございました。

来年も、より大きな変化と挑戦に溢れる一年にしていきたいと思います。


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西村 和則

代表取締役

西村 和則

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root 代表取締役 事業成長を実現するためのデザインをお仕事にしています。 プロダクト戦略、組織デザイン、UI/UXデザインが主な守備範囲です。 2歳児の父。子育て奮闘中。

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