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Airbnbのユーザー同士が「信頼」し合うためのUXデザインアプローチ

この記事はAirbnbのExperience Design LeadであるCharlie Aufmann氏のブログ記事を公式に許可をいただき翻訳したものです。
顔の見えない相手に対しての仲介役となり、初対面の人同士のマッチングによる不安を「信頼」に変える仕組みづくりを、デザインを通してどのように行ったのかをご紹介します。

また、この記事はAirbnbの共同創業者、Joe GebbiaによるTEDトーク「Designing For Trust」の姉妹編となっています。そちらも是非あわせてご覧ください。


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「ホスピタリティ」は何かと引き換えではない。作りだすものである。

あなたがホスピタリティについて考えるとき、携わるには面白いビジネスだと感じることだろう。
なぜなら、ホスピタリティはビジネスであるだけではなく、社会においてもっとも深く根付いた文化的な慣習のひとつであるし、数世紀におよぶ伝統や信念に基づいたものであるからだ。

本物のホスピタリティは、決まった型から生まれるものではない。それぞれのゲスト、ホスト、どこで起こるのかという状況と同じくらいそれぞれが独自のものであるし、再現したり規模を大きく・小さくするなどほぼ不可能だ。

優れたホスピタリティは、自分が歓迎されていると感じられるような、タイミングの良い一連の小さな身振り手振りに要約される。それらによってあなたは「歓迎されている」と感じ、居心地良く過ごす事ができる。
要するに、良いホストでいるということは、ほぼ「良い人でいる」ということと同義なのだ。

世界190カ国以上にいるAirbnbのホストたちは、一ヶ月あたり200万人を超える、家族でもなければ友達でもなく、ましてや知り合いですらない人々に家を開放し、このようなホスピタリティでもてなしている。

では、これら全てを可能にしているものは一体何なのだろうか?
それは、「信頼」である。

もちろん、企業にとって「信頼」について語ることはなんら真新しいことではない。だが、違いはこうだ:企業が信頼に足る振る舞いをすれば顧客はその企業やプロダクトを信頼する、という話をしているのではない。もちろんそれも大事だが、Airbnbを成立させている信頼というのは、ホストとゲストが互いに信頼している、ということである。

ちょうど最近、Airbnbの共同創業者であるJoe GebbiaがTEDで講演を行った。

彼が披露できる話題はおそらくたくさんあったのだろうが、その中から、彼はこの話題を選んだ。しかし、この種の信頼とは、一体どのようなものなのだろうか?さらに大事なことだが、その信頼を築くためにはどんなデザインをしたらよいのだろうか?
私たちがこの問いにどう答えていくかが、Airbnbができた当初から大切なことであったし、それは今日においても、最も優先すべきこととしている。

一年前、「信頼のためのデザイン」に挑戦すべく、私はAirbnbに入社した。社会科学者とか、行動経済学者になれと主張したいわけではない。私は一学習者だし、考えをシェアすることを大切にしている。なので、私が今までに考えたり、聞いたり、耳にしたことや、僕が知る中でもっとも素晴らしいデザイナー、リサーチャー、エンジニア、コンテンツストラテジスト、そしてプロダクトマネージャーから成るチームとともに「信頼のためのデザイン」に一年間挑戦して得られたことをここに共有する。

Airbnbでデザインをすることがこんなにも特別なことになっているのは、数えきれないほど理由があるが、先に述べたような素晴らしい人々と働けることがその一つだ。この機会を得られていることに、僕は毎朝起きる度に感謝している。

テーマ1:「共通の友人」としてのデザイン

想像してほしい。あなたは友達から、ホストが誰かを知らないパーティーに招かれた。友達に連絡しても返信がない。あなたはあと一時間でそのパーティー会場に出向き、ホストと顔を合わせなければならない。あなたの頭にはこんな疑問がたくさん浮かぶ。

これはディナーパーティーなのだろうか、それとも何か最初に食べたほうがいいのだろうか?参加者は何人くらいだろうか?知り合いは誰かいるだろうか?何を着ていくべきだろうか?何か手土産を持って行ったほうがいいのだろうか?

これらの不確実な要素が、パーティー会場につくまでにあなたを不安にさせる。

もうひとつ、パーティーに誘ってくれた友達よりも先に会場に到着してしまったところを想像してほしい。あなたは外で待ち、知らない人の家のドアをノックするのにひどく緊張する。無事友達も到着し、一緒に家の中に入っても、どこか孤独に感じる。知らない人の家にいる、あなただ。あなたは人目を気にし始め、さも打ち解けているかのような顔であたりを見回しながら、クールに振る舞う。

「必死に見えないようにしなきゃ」あなたはそう自分に言い聞かせるが、自分がかなり張り切った服装をしていることに気づく。あなたは、知り合いがいないか、会話に入り込める隙がないか必死で探す。ここであなたはプランBに作戦変更、もう知り合いを探すことを諦めて、代わりにひっそりたたずんでいられそうな部屋の隅っこを探すのだ。

これが、私たちがやるべき「信頼のためのデザイン」をしなかった場合の、Airbnbの姿である。

先ほどのパーティーの例に戻ろう。もしあなたの友達が、一体どんなパーティーで誰が参加するのか、そしてホストについて少しでも説明してくれていたらどうだろうか。あなたは何を着ていくべきか想像がつくだろうし、ホストのお気に入りのワインを手土産に持って行く提案すらできるだろう。パーティーの何日か前に、あなたをホストを引き合わせてくれていたらどうだろうか。

パーティー当日、あなたは共通の友人がいなくとも、自信をもって家のドアをノックすることができる。ホストがドアを開けると、彼はあなたが誰であるかを認識してくれる。あなたを家の中に招き入れ、新しい友達や体験をもたらしてくれる。あなたは歓迎されていると感じ、心を許し、くつろぐことが出来るだろう。

プロダクトデザイナーとして、私たちはあなたをパーティーに招いた、ホストと共通の友人のような役割を果たす。これをAirbnb上でデザインするというのはとても難しく、とても特別なことだ。
先ほど例にあげた共通の友人のように、Airbnbは新しいホストだけでなく、新しい場所や体験の紹介を促すために存在する。不確定な要素を最小限にしたり、期待を抱いてもらう手助けをオンラインやプロダクト上で行うことが、現実世界での有意義な体験を可能にする。

私たちは、ユーザー(ゲストとホスト)が互いを知ることができるようプロダクトづくりをしている。あなたが何を求めているのかを学び、その知識をもとに、新しい経験へのドアを開く。私たちは導入・紹介をお膳立てし、邪魔にならぬようそっといなくなる。そして、良い友人のように、必要とされればそこにいるような存在なのだ。

テーマ2:第一印象のためのデザイン

私たちが直面した中で、最も大きなデザインの挑戦のひとつがこれだ。というのも、私たちは凄まじいスピードで成長しており、サービスの利用者の半分が初めてAirbnbを使う人だからだ。

第一印象というのは、どんなビジネスにおいても大切だが、私たちにとっては、サービスに対して抱かれる全ての印象の中でも特に大きな割合を占める。Airbnbを使って宿泊することだけでなく、ホームシェアリングのコンセプト自体彼らにとっては新しいことだ。
例えば、オンライン上でプロフィールを作成して名前や必要な情報をきちんと入れることや、家に泊まる形でホストと関わるという、ホテルで泊まる際には考えもしないことが必要なことに、彼らは慣れていない。

そこで私たちの出番だ。
例として、以下の2つのAirbnbプロフィールを見てほしい。

Empty-profile Guest-profile
(左:空っぽのプロフィール  右:必要な情報が記入されたプロフィール)

あなたがホストだとして、より不安なく自分の家に招くことができるのはどちらのゲストだと感じるだろうか?
情報が埋められたプロフィールは、プラットフォーム上で信頼を得るのに大いに役に立つ。今までにAirbnbでどこかに泊まった履歴やレビューがなく、どんな人なのかホストが確認できない場合は、プロフィールをきちんと記入し、コミュニティの一員として簡単に身元を示し、レビュー等とはまた違った方法で自分が信頼できる人間であることをホストに伝える必要がある。

プロフィールを記入することは、義務ではない。信頼を得る機会なのだ。そして、コミュニティに対してこの機会をもっと認識させ、大切だと伝えることが私たちの仕事なのだ。

Airbnbではユーザーが予約をするときいくつかの情報が必要になるが、「さらけ出す」ことを必要としているのではない。私たちは彼らに何者であるかを尋ねてはいるが、彼らが自身について述べるのかどうかはあくまでも彼らに委ねている。

もちろん、やろうと思えば、「自分について」の欄への記入を強制することもできただろう。でもそうしてしまうと、大切なことを完全に見逃してしまう。「信頼のためのデザイン」における次のテーマにも繋がるのだが、それは「努力」である。

テーマ3:信頼は努力を必要とする

人生におけるほとんどの事柄と同様に、Airbnbに何かをした分だけ、あなたはAirbnbから恩恵を受ける。Airbnb上での信頼はシェアされ、それはゲストとホストの双方に作用する。ゲストがさらなる努力をホストに示せば示すほど、ホストはより信頼してゲストを迎え入れるのだ。

プロダクト上には、ゲストとなるユーザーが信頼に足る人間であることをホストに示す機会はたくさんある。ゲストがホストに対して、信頼を築くために見せられる最も価値あるものといえば、ポジティブなレビューだ。ポジティブなレビューがひとつあれば、以前の利用では問題が無かったことや、ホテルへの宿泊とは勝手が違うことへの理解をホストに示すことが出来る。人の家に、大事に、責任を持って泊まることができるということを伝えられるのだ。
しかし、もしあなたへのレビューが一つも書かれていない場合、あなたの努力をはかる指針となるのは、「自分について」というプロフィール欄だ。

ゲストが「自分について」の欄を埋めるようになればなるほど、彼らに対するホストの信頼度・歓迎度が高くなるということがこれまでの調査で判明している。

ゲストが努力を示すことの出来る場として、メッセージも一つの良い例だろう。これは予約が成立するまでにホストとやりとりするメッセージのことを指す。私たちの調査では、予約前のメッセージが、ゲストの努力や、自身が信頼に足ることを示す好例となっていることがわかった。

数カ月前、私はヨーロッパに旅に出ていた。というのも、ホストがどのようにゲストを信頼し、打ち解けるかの調査を行うためだ。
調査グループの参加者の一人が、こんなことを言っていた。

「もし、誰かがあなたに初めてメッセージをくれるときに、気を遣って、自己紹介を少ししてくれてたら、あなたは緊張せずに済むと思う。信頼には努力が必要なんだよ。」

もう一つ、違う調査プロジェクトで得られたとあるホストの言葉を紹介しよう。

「リファレンス(参照・参考資料)のようなものががあるといいな。Airbnb上でリファレンスが見れるのかどうかは知らない。あなたのお母さんはあなたのリファレンスを書くことが出来るから、レビューとリファレンスは違うものだと思ってる。でもそれで彼女が努力してきたってことがわかる。」

予約とともにゲストがホストに送る情報の多くは、型が決まったものだ。(宿泊日とか、宿泊人数、チェックイン時間など。)一方で、メッセージは形式が決まっておらず、ゲストが自身のことや旅の目的について詳細を記入することができる。メッセージは書いた人の個性や性格も出るので、ゲストとホスト間で信頼関係を築くことができるのだ。

現実にそうなるわけではないが、メッセージは旅の前に「会う」機会を与えてくれる。ゲストが予約前や予約時に、努力や気遣いを見せれば見せるほど、彼らはゲストに受け入れられるのだ。

今後の展望

昨年の夏だけで、1700万人以上の人がAirbnbを使って旅をした。大晦日には、世界中からの100万を超える旅行者が、150か国を超える旅行先で、ホストと一緒に年越しの瞬間を過ごした。彼らは都心で観光客に混じるよりも、各地方で現地の人々と過ごすことを選んだのである。

Airbnbを通して形成された、深く、文化が交差するつながりは、私たちのプロダクトやコミュニティが世界に対して出来ることの真なる美しさであり、イノベーションだ。外国で見知らぬ他人と一緒に過ごすということは、自分とは明らかに違う他者への真なる理解の機会を創る。

社会において人々をつなぐ接着剤としての「信頼」があることで、Airbnb上で築かれた関係は、想像しうるどんなものよりも挑戦しがいのある道や機会を与えてくれる。

それは、「世界中をもっと友好的な場所にすること」だ。

しかし、この道には困難がつきものだ。

11月、世界中のホストを集めて年に一度開催する「Host Open Conference」のために、私は大勢の同僚と共にパリに滞在した。そこでの9日間で、私は最悪、そして最高な人間性というものを共に目撃することとなった。

サン・マルタン運河沿い、星が輝く美しい金曜の夜だった。これ以上ない完璧な夜が、突然大きく様変わりした。ちょうど、親しい友人や同僚とともに、食事をともにしながら、パリ滞在中の出来事の話に花を咲かせていたところだった。ウェイターが私たちのテーブルにやってきて、通りで銃撃があったと知らせてくれた。すぐさま私たちは各々の携帯電話をとりだし、ソーシャルメディアで今の状況を確認した。そんなに大きなものではない、突発的な事件だと私たちは考えていた。しかし徐々に、絶対に忘れられないであろう大惨事に発展していた。

食事をしていた場所から通りを下ってみると、昨晩訪れたレストランとバーはテロリストによって銃撃されており、通りには何の罪もないパリ市民が何人か、亡くなった状態で残されていた。この事件についての情報がソーシャルメディアのニュースフィードにぽろぽろと流れてくればくるほど、事態がどれだけ深刻であったかを思い知らされた。そのレストランはドアに鍵がかかっており、電気も消されていた。皆がショックを受けていた。

初めは、何を考えたら良いのかわからなかった。何も意味がわからなかった。ひたすら自分に問い続けた。「どうなってるんだ?」と。

いったい何故こんなに素晴らしい街で、素晴らしい人々との素晴らしい体験の後に、身の毛もよだつひどい出来事が起きてしまうのだろうか。いったいどうして、罪の無い人々にこんなひどいことを強いることが出来るのだろうか。

こんなものを目撃して、今までと同じ世界の見方ができるだろうか。

最後の質問が、頭から離れなかった。私はある選択をした。パリにいる人々や世界中の人々も皆選択した。私たちが目撃した事件の後なら、世界に対してもっと悲観的な見方をすることも出来るだろう。もしくは、表面的に描かれることとは、もっと違う見方をすることも出来るだろう。

私の人としての信念は、この経験から強くなった。
パリでこの出来事を目撃するまで、そのさなか、そしてその後の数日間は、どんな闇よりも強く輝く、美しいものだった。

まず、あのレストランで体験したホスピタリティと友情は、筆舌に尽くしがたいものだった。世界中から来ている他人同士が、生命の危機を感じながら店内で一緒にちぢこまり、誰もが他の人を抱きしめ励まし合っていた。
あの銃撃の夜、オンライン上で信じられないことが起きていることも目撃した。

Airbnbが呼びかけたわけではないのに、パリ中で、人々を迎え入れる運動が自然発生的に起こっていた。

#PorteOuverte という、「ドアは開いている」という意味のフランス語のハッシュタグを使い、眠るための安全な場所が必要な人に対して、パリ市民たちが自分の家をシェルターとして開放したのだ。

あの事件の次の日、私は街全体が閉鎖されているだろうと予期しつつ歩いていた。しかし、そこには私の大好きな元気なパリの姿があった。家族、友人同士、そして子どもたちが歩いていたり、通りで遊んでいる。街全体が遊び場だった。カフェは変わらず賑わっていた。

paris (1)(左:銃撃されたレストラン”Le Carillon”の外で同僚と共に。 右:同じ場所、同じ視点で2日後に撮影したもの。亡くなった市民に手向けられた花で通りが埋め尽くされている。)

一見すると、Airbnbはただの宿泊サービスに見えるだろう。
休暇中にあなたが泊まるための場所を探すためのウェブサイトだ。しかし、私はそれだけではないと考えている。確かに私たちは、泊まる場所をユーザーに提供する。しかしそれだけではなく、世界の見方を変えられる、転換点としての経験に、人々を導いているのだ。

最後に、あなたがこの文章を読んでいる間も、ほぼ100万に近い人々が、自分の家を世界190カ国の人々とシェアしているという事実を考えてみてほしい。私たちのミッションは、世界中の人々がどこにでもいられるようにすることであり、そしてそれを可能にすることのひとつが「信頼」なのだ。

私は、人はみな、いい人、善人であるということを信じているし、人々が私と同じように思えるように世界を変えていくという私の仕事を、誇りに思っている。

この記事を執筆するにあたって協力してくれたMatthew Pearson(リサーチャー)、John Campbell (コンテンツストラテジスト)、そしてShane Allen(デザイナー)に敬意を表します。

Charlie Aufmann( Airbnb社のExperience Design Lead )

最後に

いかがでしたか?
本文中にもある通り、Airbnbは一見すると「ただ宿泊施設を探すためのサービス」ですが、その裏にいるのはユーザーは感情を持った人間です。
自宅という極めてプライベートな空間を貸し借りすることが多いからこそ、ゲストとホストがそれぞれ相手に抱く不安は大きいはず。その不安を払拭して互いに信頼しあえるよう、Airbnbが間を取り持つように振る舞う工夫がデザイン面でなされているのですね。

翻訳元:
Designing For Trust
Observations from my first year at Airbnb

Airbnb: https://www.airbnb.jp/

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