西村 和則
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受託ビジネスを成長ビジネスに変えるための3つのアイデア

IT業界の受託制作と聞くと「ラーメン代稼ぎ」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
いわゆるWebサービス、アプリ開発を主軸とする企業において資金繰りのための手段として受託制作で短期的に収益を立て食い繫ぐことからラーメン代稼ぎと言う名が付いています。
弊社はデザイン会社としてお仕事をいただいている身なのでラーメン代稼ぎとしてではなく正業として受託制作を行っています。この受託制作ビジネスの将来性について自分なりに思うことがあったので考えをまとめてみました。

そもそも受託制作とは何なのか?

人によって捉え方は様々ですが、IT用語辞典を参照すると「顧客企業が業務で利用する情報システムや業務用ソフトウェアなどの開発を、専門の事業者が請け負うことまた、そのようにして受注したソフトウェアなどの開発案件の一部または全部を、下請けとなる別の事業者に再び委託する(その事業者から見れば受託する)ことを指す場合もある。」と記されています。

ITの受託制作を簡潔にまとめると「顧客の要望に応えるソフトウェアの開発を専門業者が請け負うこと」と言うことになります。

将来性がないと思われがちな受託制作ビジネスの問題点とは?

短期的には受託ビジネスは収益化しやすくサービス開発などの投資型のビジネスに比べ短期的に事業を成長させられるモデルです。ただ長期的な視点で見た場合にはテクノロジーの発達による業務のシステム化やオフショア開発による制作単価の低価格化が顕在化してきている市場です。

テクノロジーやオフショア開発に置き換わる仕事とは?

・仕様策定された部分的な機能開発やデザイン制作
・作り手の意見、意思のない制作物
・既に世の中に存在する既製品の複製または類似サービス

なぜ市場が縮小するのか?

・新興国の労働者に仕事が流れることで市場価格が低下する
・テクノロジーの発達によって業務がシステムに代替され低価格化していく

上記の流れから長期的に受託ビジネスを見た場合、市場の成長性は乏しいことがわかります。
ただこの問題の本質は受託制作と言う仕組みに問題があるのではなく、市場の競争性が大きく関係しているように思えます。
問題の本質はオフショアやテクノロジーの発達によって労働力がより低価格な手段へ置き換わることにあるのではないでしょうか?

考えられる解決策と受託ビジネスの可能性

しかし個人的に、受託 = 成長性のないビジネスと決めつけてしまうのは時期尚早と考えています。
今後受託会社はコモディティ化する領域とどう向き合っていくかが重要な観点になるのではないでしょうか。

現時点で私が考える受託ビジネスを成長するビジネスに転換するための手段は3つです。

1. コモディティ化しない領域を事業軸にする

受託制作の中にもコモディティ化しない領域があります。
それはアイデアの創造、企画・仕様策定、人とのコミュニケーションなどです。
多くの人ができる事は市場的価値が低くなります。
自社にしかできない創造性、企画力を見出すことは差別化の要因となり将来的にも事業を成長させる軸となるのではないでしょうか。
ただし、ビジネスの難しいところはその創造性、企画力に再現性を持たせられるかにかかっておりコモディティ化との戦いは常につきまとうことになるでしょう。

2. コモディティ化する領域を武器にする

例えば先日米国で発表されたAI(人工知能)によるWebデザイン制作サービス
The Grid | https://thegrid.io/

このサービスでは目的を設定して、画像とテキストをアップロードするとAIが数分でWebサイトを生成してくれます。
しかも運用におけるサイト改善(A / Bテスト)を自動化し人の手を必要とせずWebサイトを運用できる仕組みです。

このように人とのコミュニケーションを取る事なくプロダクトを生成することは近い将来可能になっていきます。
これを脅威と捉えるのではなく、逆に武器として活用することで自社の生産性を最大化させ事業を成長させることも可能ではないでしょうか。

3.コモディティ化する市場を生み出す

これは受託ビジネスだけでは創造できない領域になりますが、コモディティ化されていない領域をコモディティ化することによって市場をリプレースし事業を成長させることも可能です。
特にデザインの領域においては再現性のない個人の技術やスキルに依存する業務が非常に多く存在します。
一般的にはデザインはクリエイティブなものでありコモディティ化する余地のない領域に思われがちですが、デザインの制作行程や考え方にはルールが存在しておりそれが体系化されず職人技として暗黙知で行われているのが実態です。
一見この再現性のない領域においても市場の変化、テクノロジーの発達によって再現性を生み出すことは十分有り得るのではないでしょうか。

まとめ

少なくとも現時点では 「受託 = 決められたものを作る」 では受託ビジネスで生き残ることはできないことが明らかです。
モノを作ることは本質的な価値ではなくそのプロダクトを利用する人の手に届いて初めてその価値が評価されます。
受託だから作って納品すれば終わりと言う思想では、根本的な課題は解決できず淘汰される時代がすぐそこまでやってきているのは事実です。

今後の受託制作ビジネスのあり方は単なる制作ビジネスではなく、クライアント企業様と共に創造的な未来を作るパートナーとして共に成長する努力が必要なのではないでしょうか。

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西村 和則

代表取締役

西村 和則

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root 代表取締役 事業成長を実現するためのデザインをお仕事にしています。 プロダクト戦略、組織デザイン、UI/UXデザインが主な守備範囲です。 2歳児の父。子育て奮闘中。

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