- date
- 2021.08.10
プロダクトを顧客目線で改善し続けるサイクルがチームへ定着。「マネーフォワード ケッサイ」におけるインサイトの発見や課題解決を支援
rootは、マネーフォワードケッサイ株式会社が運営する企業間後払い決済サービス「マネーフォワード ケッサイ」のUI改善を支援しています。また、インタビュー調査を通して、ユーザーに関するインサイトを集める活動へも伴走しています。
今回は、同サービスにおける与信審査否決時の体験の改善について、共に取り組んだマネーフォワード 法人ナビ プロダクトマネージャーまるさんとマネーフォワード ケッサイ デザイナー原田寛之さんのお二人にお話をうかがいしました。
rootのUXデザイナーである古里、UIデザイナーである奥沢を含む4名でプロジェクトを振り返ります。
望ましくない結果をどうユーザーへ伝えるべきか?伴走して課題を紐解きながら柔軟な対応を実現
目次
要件が固まる前から関わり、適切な進め方をプランニングする
古里:rootは、以前からマネーフォワード ケッサイのUI改善に関わっていました。今回は、否決体験の改善についてご相談いただき、ご一緒することになりました。
まるさん:rootさんは私や原田さんが入社する以前から、弊社のUI改善に伴走いただいているんですよね。もともと、UIリニューアルを担当していた社内のデザイナーが産休に入ることをきっかけに外部のパートナーへの依頼を検討し、rootさんにお願いすることになったと聞いています。
原田さん:当時の担当者は、UIデザインやWebサービスの設計に知見があり、ユーザー体験を考えたうえでUIをデザインできるパートナーを探していたところ、rootさんのコーポレートサイトを見つけて相談を決めたそうです。
古里:スタイルとレイアウトに関するリニューアルについてはご相談時点ですでにスケジュールが決まっていたので真っ先に取り組みました。ただ、その時点からリニューアル後も継続して改善に関わってほしいというご要望はいただいていました。
まるさん:リニューアルが一段落したあとには、早速私がPMを担当していた新しい管理機能のUIデザインをお願いしました。古里さんはさまざまな対象に関するデザインの知見が深く、解像度の高いユーザーストーリーから論理的に提案してくださるのでとても助かりました。奥沢さんは、褒め上手でチームにいるフロントエンジニアのパフォーマンスを更に引き出してくれ、デザインと開発の連携がスムーズになりました。rootさんには、他にもさまざまなタスクをご相談させていただきました。
原田さん:否決体験もそのうちの1つです。ご相談した時点でのアイデアは、通知方法を変えることで否決されたユーザーの体験を改善できないかというものでした。マネーフォワード ケッサイでは、ユーザーに該当する売り手企業が登録した取引先企業(買い手企業)や取引そのものを審査します。
現状は売り手が取引を登録して否決された場合、否決された理由や次のアクションとして何をするべきなのかがわからない仕様になっています。売り手が入力した顧客の情報が間違っていて否決されたのか、そもそも顧客側になにかしらの問題があって否決されているのか。また、それによって売り手側がどういったアクションをとるべきなのか。ユーザーからそうした情報が見えず、不満につながっているのではないかと考えていました。
古里:まずは、メールやサービス画面といったユーザーとの接点を洗い出しました。否決となったときに、ユーザーがその結果をどこで知るのか。接点ごとに否決に気づくポイントを洗い出していきました。そこから、どこに注力して改善を行うかについては原田さんやまるさんと話し合いながら決めていきましたね。
原田さん:今回は、改善する接点をメールに絞りました。ユーザーの中にはサービス画面を月に一度しか開かない方もいらっしゃいます。API連携で自社のサービス内で使用している方であれば、そもそもサービス画面はほとんど訪れないという方も。最も確実に見ていただける可能性が高い手段としてメールを選んだんです。
古里:「ユーザーの不安を解消したい」といった初期のアイデアを共有いただいた後、root側で必要なリサーチやインプットを行い、現状整理と情報の構造化をした上で進め方をご提案しました。これは、要件が固まりきらない段階からご相談をいただけたからできた進め方です。そして、それが実現できたのは今回の取り組み以前からの継続的な関わりがあったからこそだと考えています。
原田さん:私たちは単に開発タスクを終わらせることではなく、ユーザーの課題解決に向き合っていきたいと考えています。そのために、時に第三者の客観的な視点が大切になることもあります。過去の関わりの中で、rootさんはユーザーの声に耳を傾けた上で、客観的に提案をしてくださるチームだとわかっているからこそ、相談をしやすい関係性が築けているのだと思います。実際に、今回のプロジェクトをご一緒する中で、課題に対して論理的に向き合っていくrootさんの姿勢に触れて、とても共感しています。
ユーザーや他部署と共に、サービス体験を改善
原田さん:改善する接点をメールに絞り込んだあとは、ユーザーにどんなメッセージを伝えるべきかの検討を進めていきましたよね。「否決」の通知というのは、通知の中でも少し特殊なので、その点を考慮して進めていくのは大変だったかと思います。
古里:否決を通知するということは、ユーザーに期待と異なる結果を伝えることになります。まず、ユーザーの期待と異なる通知をどう伝えているのか、ヒントを調べてみることにしました。
原田さん:どういった体験であればユーザーに不快感・不信感をもたせることなく伝えられるか、いくつものパターンを集めていただきましたよね。
古里:パターンを集めてみると、傾向が見えてきます。それらの傾向を踏まえた上で、マネーフォワード ケッサイではどんなメッセージを伝えていくことが望ましいのかのアイデアを出していきました。例えば、審査結果をユーザーの状況や否決の理由にあわせて出し分けることや、ユーザーがとるべき行動がすぐ行えるように再審査の処理がそのままメールのリンクから実行できるようにするアイデアなどがでていましたね。
奥沢:リサーチによって、メールのスタイルや表現についてもヒントが得られました。改善前はシンプルなプレーンテキストのメールでしたが、見るべき情報の優先順位を定め、その優先順位にあわせて視覚的にメリハリをつけるといった改善アイデアもでてきました。
原田さん:いろいろな角度からアイデアを出していただいた上で、望める効果の大きさとコスト・スケジュールを基準に実施項目を絞り込みました。今回リサーチと同時並行でユーザーインタビューも実施しユーザーのペインが明確になっていたことで、優先順位づけの判断がしやすかったです。ペインがはっきりしていたことで、アイデアごとにユーザーのペインと照らし合わせて効果の大きさを予想できました。
奥沢:実際にユーザーと接点を持つ審査部やCSチームの方々にもたくさんご意見をいただきました。
原田さん:否決を体験したユーザーとこれまで一番接点を持っていた方々なので、関わっていただけてよかったです。必要な情報の過不足だけでなく言い回しや言葉遣いの観点でもご意見いただき、最終の微調整まで一緒に行いました。
奥沢:表現として適切か、もっと工夫できる箇所はあるかなど、ユーザーに近い視点でレビューしていただけたことで、より精度高くメール文面を検討することができました。関わっていただけたことで、体験に統一感が出しやすくなったと思います。
原田さん:関係者も多かったですが、コミュニケーションコストがかかることをいとわず、話し合いながら一緒により良いものを作っていこうというrootさんの雰囲気がとてもありがたかったです。
今回もrootさんにリサーチや発散・収束の工程を担ってもらったことで漏れがない納得感の高い体験になったと思っています。実際に営業を通してお客様から「便利になった、わかりやすくなった」という嬉しい声も届いています。
リサーチを通して掴んだユーザーインサイトからさらなる改善施策を実施
古里:ユーザーインタビューでは、否決理由以外にもユーザーが必要としている情報があり、それらの情報の提示も検討する必要があることがわかりました。ユーザーインタビューから得たインサイトは、他の改善タスクにも発展していますよね。
原田さん:今まさに取り組んでいるUI改善がそうです。ユーザーに登録いただいた取引で、否決されて債権譲渡されない場合、ユーザーは未入金が発生した請求を自分で顧客に督促しなければなりません。そのときにどの請求が自分で督促すべき請求なのか、UI上でわかりやすく確認したいというインサイトが、ユーザーインタビューから見えてきました。こうした改善の積み重ねによってユーザーの使いやすさがさらに増し、同時にカスタマーサポートの負荷軽減が望めるだろうと期待しています。
こうした改善施策に取り組めたのも、rootさんとご一緒して情報が構造化され、今まで気づかなかった課題が見えてきたからだと考えています。
古里:リサーチ等を行い、発散と収束の工程を経たことで、アウトプットはユーザーの課題を解消するものになったと考えています。これらの検討フローが今回限りの取り組みではなく、組織に根付くものにしたいと考えていたので、次の改善策へと活かされていて嬉しいですね。
まるさん:その次の改善や他関連サービスにおける改善の中でも同様にインタビューを行い、そこから得たインサイトをまた次の改善へと繋げていく。そんなサイクルをチームで共通化していきたいですね。
原田さん:rootさんと一緒に動き方を確認しながら実践していけた経験は、今後チーム内でサイクルを共通化していくための大きなきっかけになるだろうと感じています。
古里:私たちが提案した進め方に対して、原田さんやまるさんが柔軟に受け入れてくださったからこそできたことだと思います。顕在化した課題を改善していくだけでなく、解消するためのプロセスの中で潜在的なインサイトを見つけていきながら、マネーフォワード ケッサイや他関連サービスの体験をより良くするお手伝いをしていきたいと思います。
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私たちは事業戦略に応じたプロダクトデザイン戦略策定からUXデザイン、人間中心設計に基づいたデザイン手法を実行することで事業の立ち上がりから成長までの過程を支援します。サービス開発、UXデザインのことでお困りの方は、rootまで気軽にご相談ください。