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デザインファームのCIリニューアルは難しい? rootの歩んだプロセスをデザイナーわりえもんさんと振り返る

2021年6月7日、rootのCIが新しくなりました。rootではミッションやバリューをフィロソフィーとして、これらをリニューアル。CIはアートディレクター・デザイナーの割石裕太(わりえもん / @wariemon)さんにデザインを担当いただきました。

会社のフィロソフィーをカタチに落とし込むプロセスでは、どのようなやりとりがあったのでしょうか。最終的に生まれたロゴには、どのようにrootのらしさを込められたのでしょうか。

わりえもんさんとroot代表の西村にCIが生まれ変わるまでの軌跡を振り返ってもらいました。

会社のフィロソフィーを見つめ直す

西村:
rootは創業から9年が経過して、これまで西村個人で取り組んできた活動が組織に変化し再現性を持って取り組んでいく必要性が生じていました。また、事業成長に伴走してデザイン支援をするためにもメンバーそれぞれがチームとして活動することが必要になりました。そこで会社のCIを刷新することで、組織として一貫したメッセージングやコンセプトを打ち出していく必要性を感じロゴ、Webサイトのリニューアルを割石さんに相談しました。

CIリニューアルを経てフィロソフィー、今後のビジョンをまとめた代表西村note:
https://note.com/nishimuu/n/nba81b645da07

割石さんに相談したのは、過去にrootが主催する「Service Design Night」などのイベントに登壇いただいたのもあるのですが、もともと、割石さんの実績を見て、rootにないものを持っていると感じていたことが大きいです。

過去登壇いただいたService Design Nightのレポート:
https://techplay.jp/column/65

rootは、ロジカルに物事を考える傾向が強く、そういうタイプのデザイナーと相性がいいチームです。ただ、今回も相性の良さでパートナーを選定すると、感性や視覚的な表現が偏ったものになるのでは、という懸念もあり、バランスをとりたいと考えていたんです。なので、僕たちだと説明的で複雑になりやすい思考を咀嚼し、わかりやすくシンプルなものに落とし込むことができる割石さんにご相談させていただきました。

割石(以下、わりえもん):
自分のことを理解いただいた上で相談してもらえたのは嬉しかったですね。デザイン会社がクライアントになるのは初めてで、自分としてもチャレンジということもありますが、rootさんの考えに共感したことも大きく、ぜひお手伝いしたいなと思いました。

西村:
最初は、rootがどんなことを考えているのかのお話をしていきました。まずは会社の根幹の言葉の見直しから始めましたよね。

わりえもん:
そうですね。これまで使っていた言葉はなにか、どんな意図が込められているのかを最初にヒアリングさせていただきました。今もフィットしている点、していない点。さらによくできる点はどこなのかなど、ときには壁一面のホワイトボードが埋まるほど、議論を重ねました。

ミッションを捉え直し、再定義する

わりえもん:
最初は、議論しつつ整理していくために、MVV(ミッション、ビジョン、バリュー)のようなフレームに落とし込むように進めていきました。会社のフィロソフィーを言葉にすべく、議論を重ねるなかでいくつかの方向性が出てきましたよね。

西村:
そうですね。議論に時間をかけ、紆余曲折しながら「芯を問い、成長に貢献する」というミッションになりました。議論の過程で登場した言葉たちも、大事なものではあるので、活かしていきたいと思います。

わりえもん:
ミッションやビジョンについて議論するなかで、「デザインを民主化する」「デザインを探求する」などの言葉もありました。これらの言葉は、議論の末に「大事ではあるものの、考え方の一部だね」となりました。一度は広がりを見せた言葉たちが、元々のミッションに近い言葉に収束していく過程は面白かったです。

西村:
議論を重ねたことで、改めて自分たちが大事にしないといけないことの解像度が高まりました。当初は、ミッションに加えて、ビジョンなども議論していましたが、次第にクライアントや世の中に対しての価値を表現する言葉であるミッションにフォーカスするべきだなと考えるようになりました。

わりえもん:
「rootだけではミッションが実現できない」という話はよくしましたね。rootのミッションを達成するためには、クライアントの存在が不可欠。様々な会社のロゴデザインを担当していますが、クライアントワークが主体であるデザインファームの場合はその点が特殊だなと感じました。

西村:
創業当時のことなども振り返ってみて、もともとのミッションであった「デザインを通じて、事業成長に貢献する」はこれからも大事にしたい考えなんだなと改めて気づきました。

ゼロイチから拡大期まで成長ステージに合わせ伴走するデザインファームを目指して:
https://note.com/nishimuu/n/n1ca7b5daf216

クライアントの目指す目的が達成されるなかで、rootの使命は達成される。だから、「成長に貢献する」という言葉はぶらさない。ただ、現状に合わせてより解像度の高い言葉へアップデートする。

わりえもん:
変化があったのは、rootよりも社会のほうだったとも言えますよね。当初、掲げた「デザインを通じて、事業成長に貢献する」というミッションは10年弱の経過と共に「当たり前のこと」になった。会社にとって、根源にある考え方ではあるものの、社会の変化に合わせて新しく存在意義を示さないといけなくなっていた。

議論に時間をかけたことで、候補の言葉のうちの一つが想定していたよりも、耐久年数が短いかもしれない、とわかった。例えば、「デザインを社会実装する」という案もありました。議論していた当時は良いと感じられたものの、客観的に見ると、これもすでに社会に浸透しつつある考え方であると感じられました。

今回のプロジェクトをご一緒して面白かったのは、こうした議論の積み重ねです。変遷はいろいろあったものの、それがあったからこそアウトプットへの納得感も醸成されたと感じます。

西村:
「デザインを通じて、事業成長に貢献する」に、どのようにrootの思想を入れ込むか。それができなければ、アップデートする意味がありません。ここに「芯を問い」という言葉を付け加えることで、会社として達成すべきアクションと、思想が併存する言葉にできたと思います。

プロセスのなかで root の解像度が上がる

わりえもん:
今のミッションの重要なキーワードである、「芯」という言葉にたどり着くまでにも、かなり議論を重ねましたよね。事業にとって中心となる重要なポイントをどう表現するのか。「核」なのか、「本質」なのか、どう表現するかを議論しました。

西村:
ここはかなり議論しましたね。

わりえもん:
議論のなかで、西村さんのこだわりを感じたのは、読み手にとってどう伝わるかという視点でした。例えば、「本質」という言葉は、誰しもが否定できないものだし、伝わりやすい言葉だから、と提案させてもらいました。西村さんが懸念されたのは、読み手にとっての本質という言葉が持つ意味が多様であること。本質の意味が、rootが語りたいこととずれてしまっては伝わりません。では、どういう言葉で表現するか?は難しいところでした。

rootという社名が植物を想起する言葉でもあり、植物のメタファーをどうミッションに入れ込むかも議論のポイントでした。うまく取り込むことができれば、社名により納得感をもたせられますが、そうでないのであれば、社名から変えることも検討すべきだと考えていました。発散する中で「花を咲かす」などの言葉について議論したこともありましたよね。

西村:
ありましたね。かなり植物メタファーに引っ張られてしまったこともありましたが、最終的にはどのようにデザインで成長に貢献するか、という点を表現する言葉として「芯を問う」に落ち着きました。

わりえもん:
ステートメントも含めて、このミッションはクライアントに向き合う姿勢であると同時に、rootが自分たちの姿勢を問うことにもなりますよね。自分たちの芯を考えるための言葉にもなっている。

西村:
ステートメントは、ミッションを補強するような形で、芯とは何か、成長に貢献するとは何か、を伝えられる内容になりました。

最終的にはまとまりましたが、自分自身がどういう方向で会社を進めるべきかを見出すのに時間がかかりました。創業から、個人のデザイナーとしてサービスデザインを手掛けてきたけれど、組織として、会社としての方向性を定める際に、どういうミッションが望ましいのか。ロゴのリニューアルに取り組み始めた当初は明確ではなかったものが、模索していくなかで解像度が上っていきました。

会社のフィロソフィーを言語化するというのは簡単な作業ではなく、普段はクライアントに対して行っていることであっても、自分自身で言語化しようとするとすんなり進すまないもので、大いに悩み考えました。思考を深めていく中で見えてきたこともあり、フィロソフィーを考えていくプロセス自体の価値が高かったと思います。

わりえもん:
プロセスの途中で、rootのみなさんにも進捗中のものを共有しながら、策定中の言葉に対する質問や議論などを行ったのも良かったですよね。西村さん自身が会社の文化として、メンバーがどう感じるかを重要視されていたこともあり、巻き込みながら進めていきました。僕自身、いい意味で改善のプロセスを一緒に体験させてもらった感じがありました。

西村:
メンバーに共有するタイミングは多かったですね。最終的な判断は自分がすると思っていましたが、組織の人数もまだ少なかったのもあり、判断に足るものになっているかどうかを聞くように進めていきました。

メンバーからの反応も受けながら、自分の中にある芯が揺らぐか否かを見るようにしていたんです。揺れないものは自分のなかでも確固たるものになっている。ただ、それをメンバーに確かめずに決めていくと、出来上がるものが独りよがりなものになってしまう。共有しながら進めていくことで、自分の確信を深めていきました。

root の「芯」を捉えたロゴデザイン

わりえもん:
ミッションの言語化ができたことで、ビジュアル化が進められるようになりました。ディスカッションの中で得られた要素や、新たなミッションは、みなさんの想いを文字という形で紐解いたもので、rootという社名と合わせて、「言葉のアイデンティティ」と言えます。これは頻繁に変化するものではありません。

デザインも言葉も同じです。頻繁に変わると、認知も信頼も積み重ねられません。時代とともに変化し続ける中でも、自分自身を知り、何が芯にあるのか、それを伝えていく必要があります。

今回は、デザインするにあたって、root の「芯」にまつわるストーリーにブレない価値観を見出し、そのエッセンスを取り入れようと考えました。

root という社名から単純にデザインを起こすと、名前のとおり植物の「根」を表現するものになりがちです。名は体を表すというように、名前となる言葉が持つ意味は、ひと、組織そのものを直接表すものであることが多いためです。

しかし、root においては、「根」を表現することは最適とはいえませんでした。

これまでの議論の中で、rootは「事業の成長」にフォーカスすべきであり、だからこそ、成長において最も重要な部位である「芯」という言葉をミッションにすえました。

だからこそ、名前に引っ張られすぎず、「根」ではなく、成長を表す表現をすべきと考え、デザインを進めました。

西村:
根や芯など、植物メタファー(植物的表現)をどう取り入れるかは難しい部分だったと思います。

わりえもん:
難しかったですね。「芯」は植物的な表現ではありますが、それ以外のテキスト部分では説明的になりすぎることを防ぐために、植物的メタファーを取り入れませんでした。

デザインにおいても、rootはその伸びゆく先と事業の芯にフォーカスするべきであると考え、直接的な表現ではなく、 エッセンスとして取り入れる程度に抑え、「植物」「根」というキーワードに引っ張られないよう心がけました。

西村:
その思考の結果、生まれたアウトプットがこちらのロゴですね。割石さんから、一案に絞って提案します、と伺い、どんなアウトプットになるのか不安な気持ちもあったのですが、ひと目で「割石さんにお願いしてよかった」と感動しました。

わりえもん:
時間は有限です。数を出すことに時間を多く割くよりも、深く掘り下げ、1案1案をより磨き上げることに時間をかけるべきだと考えています。

他の案件でも多くても2案程度であることが多く、rootさんのロゴデザインでは、1案に絞り込んでブラッシュアップしました。

この案をプレゼンさせていただいたときは、新型コロナウイルスの影響でミーティングも初のリモートプレゼンになり、無我夢中でプレゼンした記憶があります。

西村さんは、このロゴを最初に見たときはいかがでした?

西村:
ロゴにたどり着くまでの流れの整理が素晴らしかったですね。あの議論を経て、シンプルなビジュアルで解を示していただきました。rootのメンバーも言語化できていない部分を捉えながらカタチにしていただいた感覚があったのですが、どのように考えて進めていったのでしょうか?

わりえもん:
前述の通り、「芯」というキーワードを軸に、「成長」をイメージさせるデザインにすることはもちろん、rootのみなさんの印象とあっているものにすることを意識しました。

会社を表現するということは、その中にいるみなさんを表すものにもなっているべきです。長く議論をする中で得られたみなさんの良い点、大事にしている点を取り込み、みなさんに馴染むものにする。

自分たちがどうありたいか、と同じくらい、今の自分たちを表しているか、も重視してデザインしました。

成長に寄り添うパートナーへカタチを変える

わりえもん:
シンプルなロゴタイプの中でシンボリックな存在である色鮮やかな緑のアクセントマークには、rootのスタンスを表す複数の意味を込められるように制作を進めていきました。

rootは、クライアントにとって、内部からはいつのまにか見えなくなっているものを気づかせる存在だと言えます。強みをより正しく引き出し、ユーザーに届くようにデザインする。このマークには、「アクセント」のように、事業を正しいかたちに変え、強調、強くするという意味を込めました。

さらに、このマークには「アポストロフィ」としての意味も持たせています。今に集中しすぎるがあまり、事業の芯を見失うことがあります。問いを通じて、いつのまにか省略されてしまった「間」を読み解き、芯に到達するプロセスを、省略記号であるアポストロフィにも見えるマークで表現しています。

また、「成長」を表現するために、新芽・葉に見立てています。rootが目指す事業成長のために描くべきは土の中の根ではなく、陽に向かって伸びゆく幹、葉であるべきだと考えました。デザインというツールを用いて、事業が本来持つ価値をユーザーに届けることで、事業が伸びゆく様子を表しています。

最後に、「気づき」の意味も込めました。rootが関わることで、クライアントに新たな観点やフレームワークを持ち込むことで、新たな「気づき」をもたらします。これによって、root自身が得た気づきを社内でナレッジとして共有することで、新たな気づきを得る。rootとクライアントの中で気づきのサイクルを生み、より最適なデザインに近づいていくことを表現しています。

その上で、CIについての議論を重ねるなかで触れたrootらしさを細かなディティールに込めています。

rootに流れる、多様性を重視し、個々の意見を重視する姿勢を表現するため、ロゴタイプの文字間を空け気味にして、風通しのよい会社であることを表現しています。また、アクセントカラーを鮮やかなグリーンにすることで、伸びゆく草木の葉をイメージさせるものにして、クライアントと共に、root のデザイナーも成長し、陽の目を浴びられる場所であることを表現しています。

新しいロゴタイプのアクセントマークは、元のシンボルであるスラッシュを結果的に踏襲しています。ミッションも全く新しいものにしようとして、一周回って戻ってきたように、ロゴも一周回って、進化して戻ってきたというストーリーにしたいと思ったんです。

西村:
言語化に長く時間をかけてきたものの、言葉だけでは表現しきれないものがありました。1案のみの提案にも関わらず、言語化しきれていないところも汲んでもらえたアウトプットでしたし、プレゼンテーションの流れも素晴らしかった。ずっとこのロゴでやってきたかのように、違和感なくすんなりと受け入れることができました。

わりえもん:
言葉と同様に、ロゴにも耐久年数はあると考えています。

しかし、ロゴが会社の芯を表すものになっていたら、耐久年数を迎えてしまったとしても、そのときの時流にあわせたリファインを通じて長生きしてくれるはず。今回は、そんな会社の芯を捉えたアウトプットになったと手応えを感じています。

今回のプロジェクトは、お互いの理解を深めながら進めることができましたし、言葉に対する受け取り方なども議論させてもらえた印象深いプロジェクトでした。

プレゼンを終えた瞬間、西村さんが「これでスタートラインに立ったね」と言われていたのは印象に残っています。

西村:
まさに、これから始まっていく、生まれ変わった実感がありましたし、本当にお願いしてよかったと思っています。最初は、内部でロゴをデザインするという選択肢もあったのですが、内部で進めていたらここまで自社の理解は深まらなかった。違う視点から、対等な立場で、rootという会社を深めてくれた割石さんには本当に感謝しています。

会社として、新たなスタートラインに立ったので、事業、組織共に成長していきたいと思います。

rootでは一緒に働く仲間を募集しています。

ミッションを実現するため共に事業を拡大していく仲間を募集しています。創業まもないスタートアップや大手企業の新規事業の立ち上げから成長過程を支援することで、事業成長のステージにあわせたデザインスキルとノウハウと身につけることができます。

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