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情報の伝え方でユーザーの意思決定はどう変わる?デザイナーが知っておきたい認知バイアス【後編】

本記事はイスラエルのスタートアップ「Pipl」でVP Productsを務めるGil Bouhnick氏のブログ記事を公式に許可をいただき翻訳したものです。

ブログ記事では、デザイナーが知っておきたい41個の認知バイアスについて説明されています。本記事は後編です。情報やメッセージの受け取り方や意思決定にまつわる20のバイアスを紹介しています。

前編記事では、意思決定における「見た目」の影響や不合理性など21個のバイアスを解説しています。まだ読まれていない方は、ぜひご覧ください。

前編記事はこちらから

前編記事の冒頭でBouhnick氏は「“邪悪”になるのは避けなければいけない」と強調しています。本記事も、以下の内容を踏まえて参考にしていただければ幸いです。

もちろん、認知バイアスを“邪悪”な方法で利用することは絶対に避けなければいけない。認知バイアスは、プロダクトの価値を証明するフェアな機会をつくるために役に立つものだ。ユーザーと誠実に信頼を築いてこそ、コンバージョンレートやエンゲージメント、リテンションレートが向上する。


いとも簡単に説得されてしまう

人間を説得するには技術が必要だ。以下では、伝えたいメッセージをよりよく伝えるためのバイアスを紹介する。

22. アンカー効果

人間は、最初に見せられた情報ほど強く意識する。その情報が後々の意思決定を大きく左右する。

プロダクト作りにどう活かすのか?

昔からよくある方法だ。商品紹介において、一度高い価格を提示した後、線で修正して、値下げした価格を表示するのは効果的だ。iPadの発表会でスティーヴ・ジョブズも用いた方法だ。

(スティーブ・ジョブズによる“アンカー効果”を的確に利用している)

見事なものだ。そして、以下が僕の考えるアンカー効果の活用法だ。

(アンカー効果を使った価格表示の例)

23. 双極割引

人間は、将来の大きな報酬よりも、現在の小さな報酬を好む傾向にある。

プロダクト作りにどう活かすのか?

将来の大幅な割引よりも、ユーザーが今から行おうとしている購入において割引を提供しよう。

(小さい割引を今すぐオファーすると伝えよう)

24. 社会的証明

他の人も皆使っていると聞けば、良いプロダクトに違いない!と人間は判断しがちだ。

プロダクト作りにどう活かすのか?

社会的証明はユーザーと信頼を築くうえで役に立つ。例えば、以下ような情報をAppStoreのページに含めるかどうかで、ユーザーの反応は変わってくるだろう。広く知られているユーザーのロゴ

1.広く知られているパートナー企業のロゴ
2.想定ユーザーに近い顧客のレビューやおすすめ
3.数字(顧客数や売上、セッション数など、効果的なもの)
4.メディアの紹介や引用(“〇〇で紹介されました”)
5.有名なアワード受賞歴(“WIREDの選ぶ〇〇アワード受賞”など)
6.獲得した認証
7.活用事例やケーススタディへのリンク

Social Proof – Build trust using counters and customer logos

“私たちはこんなにすごいんです、なぜなら”と言うのではなく、本当にそう感じてくれている人にコメントしてもらおう。

Social Proof - Don’t say “We are awesome because…” and instead, let others testify. www.mobilespoon.net

25. 権威バイアス

人間は権威ある、あるいは有名な人物の意見を「正しい」と感じ、影響を受けやすい。(その権威と意見するトピックに関連性がなくても影響を受けることさえある)

プロダクト作りにどう活かすのか?

プロダクトの関わる領域において有名な人物から評価を得られたときは積極的にユーザーに共有しよう。

もし、プロダクトに関心を持ちそうなインフルエンサーがいれば、プロダクトやサービスを使ってもらおう。使ってもらった感想やコメントは目立つ形で伝えよう。必要に応じて、プロダクトの関わる領域のプロフェッショナル(医者や教授)のコメントを紹介しよう。

Authority Bias - Promote your strongest references
(「きっとあなたもプロダクトを気に入るだろう」ではなく「なぜ成功する起業家たちがプロダクトを気に入ったか」を伝えるほうが印象に残る)

26. バンドワゴン効果 (ハーディング現象)

人間は「みんなやってるから」という理由で行動したくなりやすい。同じように考えている人が多いときに、意見を変えてしまうこともある。

プロダクト作りにどう活かすのか?
利用しているユーザーが多いときは、「どれくらいのユーザーがプロダクトを使っているのか」あるいは「これから使う可能性があるのか」を伝えることが効果的なこともある。

ほかにも、以下のように最も人気な選択肢を表示すると、その選択肢を選ぶ人は増えるだろう。

The “Most Popular” example

27. 所属バイアス

人間は社会的な生き物であり、グループに所属していると感じるために、他の人と同じ行動を取る傾向にある。最近のエンジニアは皆Slackを使っているらしいと聞いたら、試してみたいと感じたはずだ

プロダクトにどう活かせるのか?

ユーザー数やセッション数が多いなら、その数値を示し、自社のプロダクトがスタンダードであると伝えることは効果を発揮する。

28. 内集団バイアス

人間は一度集団に所属すると、他の集団のメンバーよりも、その集団のメンバーを自動的に好む傾向にある。同じ集団のメンバーを進んで支援しようとするのだ。

In-group Bias - the mobile spoon

29. NIH(ot-Invented-Here Syndrome)症候群

人間は、すでに存在する道具を活用するより、自分たちで同じ道具を発明しようとする。

例えばエンジニアのなかには、既存プロダクトを活用するよりゼロから自らの手で開発するのを好む人もいる。

マネジメントにおいてどう回避できるのか?

NIH症候群を乗り越えるにはチームの能力を褒める必要がある。彼らの専門技能はコアとなるプロダクト作りに不可欠であり、既存の関連サービスの開発にその技能を使うのはもったいないと伝えよう。

30. 信念バイアス

人間はすでに知っている知識に沿った議論ほど納得しやすい。知っている知識や前提と反する議論は受け入れがたく感じるのだ。

UXライティングでどう活かせるのか?

プロダクトのメリットについて語るときはユーザーの知識や前提と反するような、大げさな記述は避けよう。読み手は「そんな上手い話はない」と、決して納得しないだろう。

31. フット・イン・ザ・ドア・テクニック

小さな承諾は、交渉や依頼を円滑に進めるコツだ。その積み重ねが大きな頼みごとを受け入れてもらうことにつながる。

サブスクリプションプロダクトでどう活かせるのか?

無料トライアルでユーザーに少しずつプロダクトを使ってもらおう。

オンボーディングにどう活かせるのか?

オンボーディングタスクを複雑にしすぎないように心がけよう。小さなタスクに分解し、達成するたびに報酬を得られると、ユーザーのモチベーションが高まるはずだ。

(オンボーディングでは小さな報酬を得られるようにしよう)

32. 変動報酬

人間は予期していない報酬ほど、強い喜びを感じる。

プロダクト作りにどう活かせるのか?

ユーザーには、毎日小さなオファーやポイント、プレゼントを用意しよう。日常的なアクションが増えると、ユーザーはプロダクトに愛着を抱きやすくなる。

(「今日の特別オファーはこちら!」と伝えよう)

想像しているよりも“非”合理的

合理的な選択は想像しているよりもずっと難しいものだ。

33. ギャンブラーの誤謬

人間は、特定期間においてあるイベントの発生頻度が高ければ、その後そのイベントの発生頻度は下がると誤解する。

仕事においてどう回避するのか?

直感ではなく数字からファクトを掴むことを意識しよう。

34. 確証バイアス

人間は、すでにある信念や前提を裏付ける情報を欲しがる傾向にある。

自身に問いかけてみよう

KPI分析をしているとき、欲しい結果を裏付ける数値を無理やり見つけようとしていないか?日次や週次、月次レポートを無意味に行き来していないか?

35. 反確証バイアス

人間は、私たちの信念を否定するようなエビデンスを無視しようとする。

自身に問いかけてみよう

面接で、一度候補者を気に入ると、その後に懸念事項があっても、気づかずにスルーしてしまいませんか?  

36. フレーミング効果

人間の意思決定のプロセスは常に合理的なわけではない。私たちは情報がどのように表現されるかに、良くも悪くも、絶えず影響を受けている。

プロダクト作りにどう活かすのか?

多くの場合、ポジティブなフレーミング(“グラスに水は半分も残っている”)はコンバージョンに効果的である。

A positive frame in action

37. 文脈効果

人間の認知は、情報が表現される、あるいは表出するコンテクストに大きく影響される。ビジュアルデザインにおいては、どこに、どのように配置されるかによって、オブジェクトの色や大きさは異なる形で認知される。

Context Effect in UI design
(同じ大きさの円でも、左の円より右の円のほうが大きく感じるはずだ)

38. 選択的知覚

人間の認知は、私たちの期待に大きく左右される。

プロダクト作りやマーケティングにどう活かせるのか?

プロダクトのコンバージョンへの入り口は、ユーザーがプロダクトを使い始めたときではなく、広告を始めて目にしたときから始まる。

マーケティングメッセージと、プロダクトの機能に一貫性がないと、ユーザーの期待を裏切ることになる。プロダクトを使い始めてから、会員登録や購入などのコンバージョンにいたる可能性も下がるだろう。

メディアを横断して一貫したメッセージを伝えることで、ユーザーの期待値と得られる価値のズレがなくなる。それが結果的にコンバージョンにもつながるのだ。

39. ホットハンドの誤謬

人間は、一度成功を経験した人は、その後も成功する可能性が高いと判断する。

プロダクト作りにどう活用できるのか?

一度成功した経験のある人がプロダクトに携わっているなら、それを印象深く伝えよう。そのメッセージがブランドのイメージを形づくる。

(俳優のアシュトン・カッチャーが投資しているスタートアップなら成功しそうと思わない?)

40. アンティシペーション

人間の脳はポジティブな経験を期待するようにできている。ポジティブな出来事を期待できることは、私たちの幸福を大いに左右する。

例えば、長期休みを心待ちにする数ヶ月間は、長期休みと同じくポジティブな体験だ。アベンジャーズエンドゲームの早売りチケットを買ったときのように、私たちを幸せとワクワクで満たしてくれる。

プロダクト作りにどう活かせるのか?

新しいプロダクトやリリースは事前に予告し、期待を醸成しよう。ポジティブなバズ、心待ちにできる何かを用意して、ユーザーにワクワクを届けるのだ。

41. 情報バイアス

人間は、私たちの行動に影響しないときでさえ、より多くの情報を求めようとする。

プロダクト作りにどう活かすのか?:

ウェブサイトなどでプロダクトやサービスについて説明するときは、写真や文言など、なるべく詳細に用意しよう。プロダクトについて情報が多く示すほど、ユーザーの確信は高まっていく。

パート1はここまで。パート2の記事ではさらに多くのデザインスニペットや実用的な事例について紹介している。

84 cognitive biases to help you design better converting products – part 2

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