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デザイナーが戦略的にキャリアを築くための7つのアクション 

この記事は、米国大手会計ソフトウェアIntuitのバイスプレジデント兼デザイナーjames helms氏のブログ記事を、許可をいただき翻訳させていただいたものです 


デザイナーが昇進、あるいは昇給するには?
より刺激的で新しい業務に携わるには?
良い転職をするには?
チームのデザイナーだけでなく、オンラインやオフラインで出会ったデザイナーからも、定期的に受ける質問だ。素晴らしい質問だし、簡単には答えられない。

キャリアアップしたいデザイナーが知っておくべきこと

今あなたが所属している会社には、デザイナーとして新たなスキルや経験を得て、次のステップに進むための役割も、その役割を用意するニーズや予算もないかもしれない。

それを判断するために、まずは自分の役割と会社のエコノミクスを把握しておく必要があるだろう。会社の収入と支出を左右する要因は何だろうか、それぞれの数値目標は何だろうか。会社はどこで価値を創出しているのか、創出した価値はどのように測られるのか。より多くの価値を創出するためにも、デザイナーはこれらを把握しておかなければいけない。

もう一つ、知っておくべきことがある。多くのデザイナーは「今の役割において良い仕事をすれば、新たな役割を担う準備ができたと証明できる」と勘違いしやすい。部分的には正しいが、今の仕事をどれだけうまくやっても、今の仕事に向いていると証明するだけだ。より多くの仕事をこなしても、もっと働けると証明するだけだ。

あるいは、より多く働いても結果が同じだと証明することになるかもしれない。追加で仕事を引き受けても、アウトプットの質が下がるか、燃え尽き症候群になる可能性が高いからだ。その両方が起きることもある。

だから、デザイナーは日々の業務において戦略的にレバレッジをかける方法を見つけなければいけない。より少ないリソースで優れた戦術を実行し、目標を達成する方法を発明するのだ。

発展途上国では、女児は毎日平均6時間を水源地までの往復に費やしている。

キャリアにおける“戦略的レバレッジ”とは?

戦略的レバレッジについて説明するときは「水汲み」の話をする。発展途上国の少女にとって水汲みはもっとも重要な任務だ。家族の飲み水であり、料理や農業のための水。少女が任務を果たさなければ家族は死んでしまうだろう。

しかし、サハラ以南のアフリカの子どもたちにとって、水汲みは貧困から抜け出すのを難しくする重荷でもある。彼らは水汲みに一日平均6時間を費やす。その分だけ学校で勉強したり、長期的な成長を見据えたアクティビティに勤しんだりする時間を失う。水汲みをしている少女たちにとって、短期的な生存ニーズの充足と長期的な成長機会の獲得はトレードオフの関係にあるのだ。

さて、どのような解決策が考えられるだろうか?この話がキャリアとどう関係するのだろうか?

とある研究によると、安心して飲める水にいつでもアクセスできる状態を整えることは、地域社会に大きな変化をもたらすことがわかっている。近場の井戸があれば水汲みの時間が減り、少女が教室に戻れる可能性が高まる。井戸の設置という戦略的レバレッジの効く解決策があれば、一人の少女の仕事を減らすだけでなく、村全体の誰もがより有意義な仕事に時間を費やせるようになる。

こうした解決策を見出すにはビジョンが必要だ。ビジョンは大抵の場合、次のような簡単な質問から導き出せる。

・ゴールは何か?
・現状はどうなっているか?
・どのような選択肢があるか?
・どのようにして進むべき道を決定するか?

綺麗な飲み水のある井戸, DR Congo© EC/ECHO/Damien Blanc, via flickr, CC BY-SA 2.0

デザイナーが戦略的にキャリアを見直すためのアクション

さて、次はあなたが「水汲みをする子ども」になったと想像してみよう。今後の成長やキャリアは、「水汲み」つまり日々の業務をいかに批判的に見直せるかにかかっている。次の6つの視点から考えてみよう。

・目標達成のための努力が重複していないかを探そう
・長期的な視点に立った意思決定を優先するための原則をデザインしよう
・パターンを見つけて、テンプレートやシステムを設計しよう
・あなた自身のゴールと重なるゴールを見つけ、解決に取り組もう
・少しずつ積み上がる何かを見つけて軌道を変えよう
・関係のない新しいスキルや経験から学ぼう

あなたがデザイナーならば、あるいは斜に構えた思想家やドットコネクター、顧客に寄り添う共感者、メイカー、実験者ならば、こうした視点で思考する力は備わっているはずだ。

戦略的レバレッジをかけるための6つのコンセプト

上記を踏まえて、キャリアに悩むデザイナーが今から実行できるアクションを挙げてみよう。

1.同僚の愚痴を聞いてみる

同僚の愚痴は解決されない痛みの表現だ。愚痴に加わるのは簡単だが、賢いデザイナーはそれらをドキュメント化し、上記のリストも参考にしつつ解決を思考する。

例えば、「ちゃんとプロセスを設計すべきだ」という言葉は「仕事の流れや意思決定の方法、優先順位の付け方、成功の定義について認識を合わせるべき」というニーズの表現であるケースが多い。

「彼らは私たちが何をしているのか理解していない」は、コミュニケーションの不備やフィードバックループの崩壊、管理職のサポートの欠如、カルチャーのズレを意味するかもしれない。「あの仕事に費やす時間がほとんどなかった」はデザイナーが目標達成の駒として扱われ、プロセスの最後まで役目を与えられない状態、戦略や成果に対するオーナーシップを感じられていない状態を示す典型的な発言だ。

これらの愚痴は戦略的な課題解決の手法を学ぶ良い機会だ。最大限活用しよう。解決にトライできないか、必要な支援を得られないかを上司に提案してみよう。

2.お金の動きを理解する

デザインにおける意思決定には、顧客と企業のニーズがバランス良く反映されている必要がある。顧客に提供する価値(顧客が対価を支払っているもの)を理解し、仕事やタスク、インタラクション、フローといった要素からどのような価値が生まれているのかを理解しよう。提供した価値に見合う報酬を引き出す技術も必要だ。報酬をめぐるやりとりには感情も大いに影響する。金銭的な取引で交換されるのは金銭だけではないのだ。

また、所属するチームがどのように資金を得ているのかを理解しよう。上司にデザイン予算について聞いてみても良い。驚くほど多くのデザイナーがビジネスの仕組みに無頓着だが、一度仕組みを知っておくだけでどうすればお金が動くか考えやすくなる。

例えば、投資と経費はどのように区別されるのか。投資とは、戦略的なものであり、通常は長期的利益を見据えて行われる。経費とは、効率性を追求するために削減されるべき支出だ。デザインが長期的利益が見込める投資として見なされるなら、デザインチームは成長し、繁栄出来るだろう。デザインが削減されるべき「経費」として見なされると、その価値はゆっくりと失われていく。

3.顧客視点で考えてみる

顧客の目を通してあらゆる状況を見つめてみよう。これはデザイナーが果たすべき最も価値ある役割の一つだ。顧客体験を思考できるような議論の起点になってみよう(ただUIについて考えるのとは全然違うので注意してほしい)

あなたが考えるべきは顧客の欲求やニーズ、不満、喜びだ。顧客はその体験を好んでいるのだろうかか、心から欲しがっているだろうか、関心を寄せてくれるだろうか。こうした問いに確信が持てないなら新たな実験を提案するチャンスだ。

4.“曖昧な領域”に成長機会を見出す

どの企業にもビジネスやデザイン、データ、エンジニアリング、マーケティングなど、すべて曖昧に交差するような領域があるものだ。その領域には信じられないほどの機会が隠れている。

その領域では、オーナーシップの欠如や他の領域を邪魔してしまう恐怖、手を動かす人の不足により、事業の停滞が起こりやすい。曖昧な領域を少しでも明確かつ、具体的な状態へ整理するには、プロトタイプが必要だ。図解したり、何かしらアクションを実行したりすれば、もし間違ったとしても現状の議論に変化を巻き起こせる。

コンフォートゾーンの外に出るのも一種のスキルだ。誰かの思考を促すためにコンフォートゾーンの外に出て間違えることに慣れるには練習が必要だ。そしてその練習は確実に利益を生む。時にデザイナーの仕事は、答えを出せるよう支援するのでなく、ただ問いを立てることでもある。

成長のための手段を表した図。人間関係、責任とアカウンタビリティ、新しい経験を通したスキルの開発が、転職や昇進、新たな仕事に接続する

5.新しい人間関係を築く

新しい人に会おう。以上。

という冗談はさておき。信頼関係や影響力、事業のための資金を蓄えるには、新しい人間関係が不可欠だ。話したことのない人に自分を知ってもらおう。社内のメンバーでも良いし、他社で働くデザイナーや学生、教育者、コミュニティのリーダーでも良い。興味関心の近い人や尊敬する技術を持つ人たちと関係をつくるのだ。

決して500枚の名刺を配ったり、LinkedInのつながりリクエストを送りまくってほしいわけではない。量より質が重要だ。ちゃんと質の伴う友人関係やパートナーシップを築こう。そのための行動があなたの成長を左右する。

もし、新たな役割や仕事を得ようとしているなら、得たときにどのような人と一緒に働くことになるかを考えてみよう。そして、一緒にコーヒーを飲んだり、ちょっとした共同作業に取り組んだりして、関係を築いてみよう。信頼が必要になる前に、相手の信頼を獲得しておくことだ。小さくても意味のある価値を提供しよう。将来の自分を救う関係を積極的に維持しよう。機会があれば対面でコミュニケーションを取るのも良い。SlackやLinkedinでメッセージを無限にやり取りしていても人間関係は築きづらいものだ。

6.新しいスキルと経験を獲得する

新たな仕事をしたい、あるいは自らの武器を増やしたいとき。Courseraのクラスを受けて、履歴書に追加するのは良い方法だ。新しいスキルや経験はどんなに一見関係のないように思えても、いつか役に立つ日が来る。

面白く、活発で、好奇心旺盛でいるよう心がけるのも大切だ。そのために、面白くて活発で好奇心を刺激する取り組みをしよう。面白く「ある」だけでなく、面白い何かを「する」ことが重要だ。

私の友人に超優秀なiOSディベロッパーがいるが、彼は自転車の整備士であり、キャンピングカーで旅をする。もう一人の友人はエクスペリエンスストラテジストだが、ポッドキャストの司会者としても有名だ。私自身もIntuitのデザイン全体を指揮する仕事をしているが、自動車とレースへの情熱を注いでいる。他にも優秀なデザインリードでありながら、アプリやコーチングの実験、写真、料理など、常に新しいチャレンジをしている知人もいる。

こうした人たちは絶えず面白いことをするから面白い。そこで得た経験や情熱、独自の考え方、細部やニュアンスへの異なる視点など、無数のドットを仕事に持ち帰ってくる。本業で課題に直面したときに、そのドット同士が像を結ぶ。

一つの会社、一つの役割に留まっていると、こうしたインスピレーションや挑戦、創造的なひらめきを失いやすい。あなたは「私はとても重要な仕事をしている」と思っているかもしれない。けれど、その仕事以外は何もしていないとしたら、周囲が別の仕事を任せるイメージを持ちづらいだろう。

何より「この進め方を知っているのは自分だけ。だから、わたしは代替の利かない存在だ」と考えないよう気をつけてほしい。それは罠だ。だって、あなたは代替の利かない存在ではないからだ。

7.より多くの責任を引き受ける

あえて大変な仕事を引き受けてみよう。不安になるかもしれない。気が向かないかもしれない。それでもやってみることだ。勇気を持とう。賢くあろう。助けを求めよう。沢山の助けを。

一度やったことのあるチャレンジではなく、異なるチャレンジを探そう。専門外の分野に携わる経験をしよう。不安な気持ちになると期待しよう。それが「学習している証だ」と忘れずにいよう。

より大きな責任を引き受けよう。人間に与えられた時間は想像以上に長い。きっとあなたは思っているよりも忙しくない。アサインされていない仕事にも手を出してみよう。興味のそそる仕事にも片足を突っ込んでみよう。

問いを生み出すような仕事をしよう。あなたの役割や興味関心、才能、コミットメントについて周囲の認識が変わるような仕事を。

新しい人と出会い、協働せざるを得ない仕事をしよう。あなたが活力を得られるだけでなく、会社にとって価値ある仕事を。きっと、より一層成長できるだろう。

最後に、即興演劇の3つのルールも覚えておくと良いだろう。一つ目はコミットすること、二つ目は絶え間なく練習し、学ぶこと。三つ目は、他者と協働する余白を残し、共にアイディアを生み出すこと、だ。

戦略的にキャリアを築こう
水汲みだけでなく井戸を掘るのだ

楽しんでやると良い。
とにかく、ただ座って悩んでいる状態から抜け出そう

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