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実務未経験だった私がデザインの現場で気づいた、独学で学べなかった3つの視点

こんにちは、rootの稲葉です。私は現在デザイナーとして働いていますが、2020年5月にrootへジョインしたときにはデザインの実務経験がほぼ0の状態でした。前職でチラシ制作といった簡単なDTP業務の経験はありましたが、デザインについて体系的に学んだことはなく、UXやサービスデザインについてもほぼ知識がない状態でした。

そんな私が現在デザイナーとしてプロジェクトに携われている理由は、root社内で行われている「若手育成プログラム」にあります。入社後約3ヶ月間、私はそのプログラムを受講していました。受講と並行して、実際のプロジェクトもアルバイトとして経験させていただき、プログラムが終了した現在も引き続き実務経験を積んでいます。

本記事では、デザイン実務ほぼ未経験者だった私がプログラムやプロジェクトの中で学んだ「デザインをする上での大切な視点」についてご紹介したいと思います。以前の私と同じように独学でデザインの勉強に励んでいる方に読んでもらえたら嬉しいです。

「ユーザー」を想定する

若手育成プログラムは、実際のプロジェクトで行うプロセスを擬似体験できるような内容になっています。お題は、「Zoomの新機能をデザインする」。講師を務めるrootのメンバーの古里さんから手法を教わりながら進めていきます。

リサーチを行い、課題を洗い出し、いくつもの解決策を比較しながら機能へと落とし込んでいく。機能を元にUIのプロトタイピングを作成し、ユーザーテストを実施する。その一連のデザインプロセスを古里さんに伴走してもらいながら実施していきました。

受講前の私が一人で課題に取り組んでいたら、おそらくいきなり機能を考えたりUIのデザイン作業に着手していたと思います。思えば、以前の自分は「デザインする」というと、「つくる」部分にばかり意識が向いていました。そのため、デザインを勉強するときには、良いなと思ったデザインの事例を集めたり、実際にトレースしてみたり。アウトプットする技術を高めることに一生懸命でした。

デザインをつくった先には、必ずユーザーがいます。どれだけきれいなデザインもユーザーが使いづらいものでは意味がありません。プログラムを通して、ようやくそのことに気づくことができました。

一番衝撃を受けたのはユーザーテストです。「きっとこう使ってくれるに違いない」と思って設計した機能を、全く予想通りに使ってもらえず、自分がいかに都合よく捉えて設計してしまっているかを深く知ることになりました。

「事業環境」を含めた要件をふまえる

プロダクトには、ユーザーの他にも満たすべき「要件」が存在します。そして、その要件は自社環境や市場・競合といったプロダクトをとりまく環境によって変化します。

プログラムで教わったプロセスでは、まず最初にリサーチを行います。そのときはZoomやZoom以外のオンライン会議ツールについて広く調べました。リサーチ結果から、それらのツールが現状解決できていない課題について洗い出していきます。

インターネットやSNS上で検索するだけでなく、実際に利用している人の話を聞いたり、とにかくたくさん課題を出しました。解決策についても同様にたくさん出して比較検証した上で決めていきました。

最初は、このアイデアを「出しきる」作業がとても苦手でした。アイデアを考えようとすると、心の中にいるもう1人の自分が横槍を入れてきてうまく出すことができません。

「いやいや、このアイデアはここがだめだよ」

「このアイデアはありきたりすぎないかな」

しかし、どんなアイデアでも一旦出してみると、リサーチ結果や他のアイデアと照らし合わせたときに「アイデアとしてなぜ良いか、もしくはなぜ悪いか」が見えてきます。出しきるからこそ、さまざまな要件を踏まえた判断ができる。それを理解できるようになったことは、プログラムにおける一番大きな成長だったのではないかと思います。

クライアントも、デザインの正解を持ってはいない

3ヶ月間のプログラム受講を終えたあとは、アルバイトとして実際のプロジェクトへ関わりながら実務経験を積んでいます。LPの制作を2件任せてもらったり、デザインガイドの作成に関わらせてもらったり。現在は、お客様と直接コミュニケーションをとりながら、UIの機能改善に携わっています。

プログラムのなかで一通りのデザインプロセスは体験したものの、実際のお客様とのお仕事では、また違った難しさを感じています。初期は、無意識にお客様に”答え”を求めてしまっていました。

「LPはどんなイメージでつくりましょうか」と、お客様に直接デザインの要望を聞いてしまったことがあります。「お客様も正解は持っていないんだよ」と先輩から言われたとき、ハッとしました。

プログラムでは、課題やユーザー像はあくまで自分が想定したものが判断材料になっていました。しかしクライアントワークでは、自分の「外側」にいるクライアントや関係者が要件やヒントにつながる情報を握っています。コミュニケーションを通じてクライアントから情報を引き出す必要があります。

いかにデザインの前提情報を集められるか、もしくは一緒にその前提をつくっていけるか。そういった部分もデザイナーの重要な仕事であることを知りました。

デザインは1人では学びきれない

独学でデザインを勉強していると、自分の作ったデザインが他人の目にどう映るのか、実際のユーザーならどう使おうとするかといった「第三者目線」を確かめる機会になかなか出会うことがありません。そのため、自分の作ったデザインに対してどうしても客観的になりきれない状況に悩まされることがあります。

若手育成プログラムでの取り組みでは、自分の考えや作ったものについてメンターから客観的なレビューがもらえたり、ユーザーの視点からユーザビリティテストができたりといった機会に恵まれました。この経験によって実際のクライアントはデザインのどういう点に着目するのかや、ユーザーは自分の考え通りに動いてくれないという現実を体感することができました。

デザイナーはクライアントとの対話やユーザーの観察から得られた情報をもとにデザインを決めているのだということを、初めて実感するきっかけになったと思います。ぜひ今独学でデザインを学んでいる方も、ユーザーやメンターといった立場に立って足りない視点を補ってくれるような人を見つけられると、より良い学びが得られるのではないでしょうか。

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