- date
- 2021.07.01
「ユーザーが見えない」が起こりやすいPMF前後。PdMはどうしたらプロダクトの成長に向き合える?
事業成長の分岐点であるプロダクトマーケットフィット(以後、PMF)の前後では、事業や組織に大きな変化が生じます。そのためPMF期のPdMには、事業や組織の変化にあわせて仕組みや構造を変えていく動きも求められます。
変化に対応しないまま、売上等の数値を伸ばす施策だけ重ねていると、「PMFはしたはずなのになぜかうまく伸びていけない」状況に陥ってしまいます。本記事ではPMF前後で変化するPdMの役割と陥りがちな課題、そしてその解決策についてご紹介します。
目次
プロダクトの成長においてPdMが担う大きなミッションとPMF前後で変化する役割
PMF前後で変化するPdMの役割についてお話する前に、PdMが担う責任範囲について認識を揃えておきたいと思います。ここでは、「プロダクトマネジメントトライアングル」を用いて説明していきます。
プロダクトマネジメントトライアングルとは、Dan Schmidt 氏が考案しブログ記事「A Visual Vocabulary for Product Building」の中で紹介しているモデル図です。これまで明確に定義されてこなかったプロダクトマネジメントの責務やその領域について示されています。
トライアングル内部では、プロダクトが3つの登場人物とつながりネットワークを築いています。コードを書いて開発を行う「開発者」、プロダクトを使う、もしくは使うかもしれない「ユーザー(顧客)」、そしてプロダクトへの投資や利益を期待される「ビジネス」。この3つのネットワークのバランスがうまくとれていれば、プロダクトは健全な状態であるといえます。
しかし、トライアングル内部には上記の図の白い部分のように「空白の領域」が存在します。そして空白の領域はバランスを崩す要因をはらんでいます。
開発者、プロダクト、ユーザーの間にある空白の領域を例に見てみましょう。開発者とユーザーでは、プロダクトについて知っていることも気にかけるポイントも、触れる場所も異なります。エンジニアがプロダクトの裏側にあるコードをいくらこだわって美しく仕上げたとしても、ユーザーには見えていません。ユーザーが重視しているのは、このプロダクトが自分の抱えている問題を解決してくれるかどうかです。
これらのそれぞれの頭の中にある「行動のイメージ」を表現したメンタルモデルの差異が、「空白領域」であり、トライアングルのバランスを崩す要因になりえます。そして同様の空白領域が、開発者とビジネスとプロダクトの間にも、ユーザーとビジネスとプロダクトの間にも存在します。
以下の図では、各空白領域を埋めるために必要な職能が示されています。
PdMとは、この空白領域も含めた「プロダクトネットワークの全ての領域を健全に機能させることに責任を持つ」役割だと、Dan Schmidt 氏は説明しています。つまりPdMは空白領域を埋めるために、足りない職能を自らが引き受けたり、ふさわしい人をアサインしたりすることで、トライアングルのバランスを保つというミッションを担っています。
創業期のプロダクトや組織自体がまだコンパクトな時期であれば、新たな空白をPdMが見つけ、自らが引き受けることで埋められるかもしれません。しかしPMF後、プロダクトや組織が拡張していく中で全ての空白を1人で埋めることは確実に難しくなります。
つまり成長を続けるごとに、PdMに求められることが、「自らが空白領域を引き受ける」ことから、「だれかに空白領域を託していく」ことへ変化していきます。
「ユーザーの気持ちが見えない」PdMがPMF後に陥りやすい課題
PMF後、トライアングルの中で特にバランスを崩しやすいポイントがあります。それは「ユーザー視点」です。提供者である自分と、提供される側であるユーザーの視点を柔軟にスイッチさせることはそもそも難易度が高いもの。
「1人のユーザー」に「1つの価値」を提供している創業期は、ユーザー視点の担保にはそれほど苦労を感じていなかったかもしれません。特にtoCのプロダクトであれば、「創業者が一番のユーザー」であることが多いので、ユーザー視点が担保されやすいという側面もあります。
しかしPMF後は拡大を目指すために、より一般化したプロダクトをつくることになります。つまりターゲットとみなすユーザーの層を広げ、ユースケース・ユーザーストーリーを増やしていかなければなりません。その結果、これまでの「1人のユーザー」でなく「多様なユーザー」の課題や解決策を把握しなければなりません。これにより「ユーザー視点」の難易度がさらにあがっていきます。
また、より多様なユーザーに応えるため、機能も多様化する必要があります。他プロダクトへと拡張を行うこともあるでしょう。そうなると、開発体制の強化に伴い人が増え、部署も増えていきます。さらには、人数の増加に伴って、これまでの属人的だった業務を仕組み化し、チームの誰もが担える状態に移行していく必要もでてきます。
移行初期は特に役割間をつなぐ業務をPdMが担うため、コミュニケーション周りの稼働が増えていきます。組織の人数が増える分だけ、マネジメント周りに関する業務も指数関数的に増えていきます。結果、プロダクトに向き合える時間はますます減り、自分自身の視点や立場を多様なユーザーにあわせて柔軟に変化させるのはどうしても難しいという状況に陥いってしまいます。
トライアングルにおけるユーザー視点の担保をUXデザイナーに任せよう
上記のような混乱を避けるためには、PMF以前のできるだけ早い時期からユーザー視点をだれかに託しておくことが重要です。では、だれに任せるべきか。リサーチを行い、ユーザーやステークホルダーの立場から客観的に捉えられる職能をもったUXデザイナーが適任です。
UXデザイナーは、リサーチを通して集めた情報にフィルタリングをかけて適切な情報にして渡したり、多様なユーザーの視点や文脈をわかりやすく可視化したりと、ユーザーに向き合います。UXデザイナーが日常的にユーザー視点を担保する取り組みを行えれば、PdM自身は少ない時間のなかで判断することに集中できます。
もし社内に適任なメンバーがいなければ、採用を考える前に、社外のパートナーに相談してみるのもおすすめです。社内にUXデザイナーがいない状態から、いきなり採用を行ってしまうと、スキルレベルの判断が難しかったり、現場がUXデザイナーにどんな仕事をお願いするべきかわからず、もてあましてしまったりするといった課題が生まれがちです。
まずは外部パートナーの協力を得て、社内にUXデザイナーのポジションを確立した後、外部パートナーのアドバイスも用いながら採用活動を行うのが良いのではないかと思います。root でも社外パートナーとして伴走を行いながら、デザイナー採用までご一緒する案件がいくつかあります。
自社の状況にあった方法で、早くからUXデザイナーをチームへ引き入れ、ユーザー視点を任せていくことが重要です。そして分業の仕組みやユーザー視点でプロダクトをつくるプロセスを整えておきましょう。プロダクトマネジメントトライアングルの崩れは放っておくほど、「UX負債」につながります。UXにおける負債がたくさん溜まっている状態では、健全な状態に戻すために膨大な時間と労力を費やすことになります。負債を貯めないことは結果的に事業全体の競争優位性や成長スピードの差につながっていきます。
新規事業・UXデザインのことなら私たちにご相談ください。
私たちは事業戦略に応じたプロダクトデザイン戦略策定からUXデザイン、人間中心設計に基づいたデザイン手法を実行することで事業の立ち上がりから成長までの過程を支援します。サービス開発、UXデザインのことでお困りの方は、rootまで気軽にご相談ください。