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ユーザーリサーチによる無駄な時間とコストを削減する「デザインスプリント検証」

この記事はAJ&Smart Berlinの創業パートナー兼UXディレクターヨナサン・コートニー氏のブログ記事を公式に許可をいただき翻訳したものです。


デザインスプリントによって明らかになった、現代のデザインプロセスにおける時間とお金の大きな無駄

(はじめに。はい、この記事のタイトルは嫌ですよね。肩の力を抜いて、とりあえず読んでみてください。個人攻撃ととらえないでくださいね。みなさんのことが大好きですよ。)

ユーザーリサーチを事前に行うことは、プロダクトづくりにおける時間の無駄の一つです。時間がかかる作業ですし、意思決定を避ける手段でもあります。実際に動くものを作るという行動が遅れてしまいます。

こんなことを本当は言ってはいけないことも分かってます。デザイン業界では、冒涜的行為とみなされますから。言ってはいけないもう一つの理由は、多くの会社がよく知らない顧客に対してユーザーリサーチの段階を含めることで、大金を稼いでいるからでもあります。なぜ私がそんなことを知っているかといえば、私たちもまたAJ&Smartでそうしたことをしていたからです。2-4週間の事前ユーザーリサーチは、UX/プロダクトデザインのパッケージの一部でした。私たちは様々な人にインタビューを行い、ペルソナをつくり、共感マップをつくっていました。顧客からできるだけ多くのお金を搾り取ろうとしていたわけではありません。ただ、まだよく分かっていなかったのです。当時のデザインプロセスといえば、その工程は常にこんな感じなわけです。

いくらかの時間を要しましたが、最終的に常に悩まされるパターンというのが分かってきました。当時、私たちは特定のプロダクトやサービスに関して事前リサーチを行っていました。そして、インタビューを行い、ペルソナを作り、記録文書をつくりました。実際のプロダクトのデザインとテストに取りかかると、すぐに気付きました。デザインをするとき「特定のユーザーを想定する」ことは良いことでありながら、一方で役に立つデータというのはリサーチではなく最初のユーザーテストから得られるということに。実際、ペルソナや記録文書は、その後のプロセスが進むにつれて、意味をなさなくなることがよくありました。


ペルソナ。デザインの予算に含める対象の一つであることは確かです。

この無用なプロセスに対する懸念が膨らんでいきたころ、ジェイク・クナップがGVのデザインスプリントのプロセスについて発信し始めていました。そこで重要とされるのは、めちゃくちゃ速いスピードで(4、5日ほど)実際にものをつくり、精度の高いプロトタイプ(現実的な範囲で)をすぐにつくることを優先する代わりに、入念な事前リサーチのプロセスはとばすというものです。

このアイデアに私は共感しました。自分たちが目にしている現実と、現場の結果ともどこか合致していると思いました。ですが、実際に新しい顧客とこのプロセスを試してみるまで、その効果を信じていませんでした。私たちは、その顧客に対して、通常の6-8週間のパッケージではない1週間の作業を販売し、まったく準備せずに始めました。リサーチせず、ベンチマークもなく、ブリーフィングもなしです。5日後、これまで6-8週間かけてやっていた状態よりよもはるかに顧客のプロダクトを進めることができました。デザインスプリントのやり方は、自分たちのデザインプロセスのほとんどが「つなぎ」だったことを明らかにしたのです。

デザインスプリントの方法を用いることで、6週間の作業を1週間に短縮することができました。

これによって分かったのは、潜在的な(または想定している)ユーザーに実際に動くものを与える方が、単にリサーチや記録をつけて、そこから仮説をつくるよりも、はるかに多くの有用なデータが得られるということです。はっきり言うと、どちらの方法においてもただ仮説を作っているにすぎません。想定ユーザーが実際にどのような反応をするのか、彼らはどのように受け止めるのか、なにを嫌がるのかは、実際に使ってもらうまではよく分からないものなのです。なので最初の4週間を、想定ユーザーが何を好むか、どのような行動をするのか、「モバイルネイティブ」なのかどうかを知るために費やそうが、もしくはただ仮説を立てて4日後にテストをしようが、結局ユーザーが実際にプロダクト(もしくは、非常に現実的なプロトタイプ)を使うまでは有用な、利用価値のあるデータを得られないわけです。

それから、もちろん事前リサーチをすることが理にかなっているケースもあります。特に、どのような問題を解決するべきなのかが明確ではない場合(たとえば、病院の緊急治療室を改善するケースなど)はそうです。ですが、ほとんどの場合は、時間のかかる無駄の多い事前リサーチをやめて、実際の成果物を優先させる方が良いと思います。

著者について:
ヨナサン・コートニー氏は、AJ&Smart Berlinの創業パートナー兼UXディレクターです。小粋で元気なプロダクトデザインのワークショップやトークを世界中で行っています。ツイッターとインスタグラムのフォローは @jicecream からどうぞ。

原文: User Research is Overrated
翻訳者: 佐藤ゆき

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