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顧客視点をデザインに取り入れて購買率7割増。栄養改善サービス「VitaNote」との半年

「顕在課題だけでなく、理想の姿を見据えたアプローチに助けられました」

そう話すのは、株式会社ユカシカドマーケティング開発部ゼネラルマネージャーの石田幸輔さん。同社は誰でも簡単に栄養改善ができる世界を目指し、栄養検査キット「VitaNote」と、検査結果に応じて調合されるオーダメイドサプリメント「VitaNote FOR」を提供しています。

rootは、ローンチして2年経ったVitaNoteをより多くのユーザーに継続して使ってもらうため、マイページの改善、UI,UXデザインに取り組みました。社内でデザイナーを抱えていない同社にとって、事業戦略からデザイナーが関わることは今回がはじめてのことでした。

プロジェクトを通し、どのように事業にデザインがインストールされていったのか。ユカシカドの石田さん、CTOの寺田大輔さんをお招きしrootの西村、古里を加えた4名で振り返りを行いました。

正式な依頼前から、期待を超える提案をしてくれた

西村:ユカシカドさんとの出会いは、ビジネスマッチングアプリ「yenta」を通してでしたね。マッチングしてからVitaNoteを試しに使ってみたところ、これは良いサービスだと思い、初対面にもかかわらず、プロダクト改善の提案をしたことを覚えています。

石田さん:軽くお茶するくらいの気持ちだったので、的確な提案をしていただいたのには驚きましたね(笑)。ユカシカドは2013年の創業なのですが、当時はCTOの寺田が兼務する形でデザインを行ってきました。西村さんのご提案を聞いて、いつか一緒にお仕事できたらと思い、寺田とも会う機会を作りました。

左:株式会社ユカシカド マーケティング開発部ゼネラルマネージャー 石田幸輔さん、右:株式会社ユカシカド CTO 寺田大輔さん

寺田さん:お会いして、すぐ私たちが当時抱えていた課題感を共有しました。VitaNoteは、検査用のキットとサプリメントの継続購入から事業が成り立っています。つまり、ユーザーにいかに継続利用してもらうかが事業の鍵になる。

そのためには、サービスやコーポレートサイト、ECサイトなどのUI改善が必要だとは思っていたのですが、どうすればいいか具体的なアイデアや技術がなかった。それをざっくばらんに相談させていただいたんです。

すると、顕在化している課題だけでなく、そもそも事業成長には何が必要かから考え、事業戦略や組織戦略の提案までしてくださいましたね。

西村:私たちは「デザインを通じて事業成長に貢献する」をミッションに掲げています。単に課題を解決するご提案もできますが、それが事業の成長につながらないと意味がない。ですから、より前提から考えご提案させていただいたんです。

寺田さん:特に印象に残っているのは、デザイナー採用の相談に乗ってくださったことですね。正社員で採用しようか考えていると話した時に、組織の現状を踏まえ、一人目のデザイナーはいつ、どんな人を採用すべきかアドバイスをいただきました。

石田さん:こうしたやりとりを踏まえ、私たちとしてもすぐにrootさんにデザイン面を支援していただいた方が良いだろうと考え、社内に説明。最終的にはマイページ改善のご相談をさせていただきました。

現状の課題と、未来のあるべき姿、両方の視点を持つ

石田さん:マイページでは、検査で得られた健康を維持するために必要な15種類の栄養素のバランスを表示。その詳細から、各栄養素の過不足や個別アドバイスを掲載しています。継続利用には、このマイページでの情報提供の最適化やサプリメント購入への接続が重要になると考え、今回改善することとなりました。

左:リニューアル前のマイページ 右:リニューアル後のマイページ

西村:ご相談を頂いた後、我々はマイページ改善のためにふたつの視点から施策を考えました。ひとつは、今のマイページを分析し、改善点を洗い出した上での施策。もうひとつは、ユカシカドの目指す『誰でも簡単に栄養改善ができる世界』を実現する、理想のマイページから逆算した施策です。

古里:目指す姿が曖昧なまま顕在化した課題だけを解決していると、サービスのあるべき姿から遠ざかってしまう恐れもある。それを避けるために、将来のあるべき姿も同時に描こうと考えました。

root 代表取締役西村

西村:施策を洗い出したあとは、ユーザーに与える影響度と施策にかかる時間の2軸でマッピング。今回の改善で取り組むべき施策を絞りました。

石田さん:当時は、離脱率やアップセル率の改善にばかり目が行っていたので、すぐ想起される施策ばかりを考えていました。このプロセスを経たことで、中長期でやるべきことや「今やらなければ」と思っていたけれど、いま部分的な改善をするより後で抜本的な改修が必要なものなどもが見えた。このプロセスを経たことが後のプロダクト改善にも大幅に活きてきています。

丁寧なユーザーテストで潜在課題も発掘

古里:ただ、ここであげた施策はあくまで仮説です。ユーザーのニーズに沿っているかはユーザーテストを通じ検証する必要がありました。そこで、過去に実施した顧客アンケートをいただき、ユーザーの属性やニーズを網羅的に調査。今回のリニューアルで狙うべきユーザー像を定め、テストシナリオとユーザーテストの成功条件を整理していきました。

石田さん:ユーザーテストの結果、現状のマイページに対する課題の解像度が上がりました。『アドバイスがパーソナライズされている実感がない』や『次にとるべき行動が不明瞭』、『栄養素のバランスを示したレーダーチャートが何を表しているのか直感的にわからない』など、開発者目線では気づかない意見をたくさん得られました。

石田さん:個人的に驚いたのが、栄養素の並びは結果が悪い順に並べて欲しいという要望です。僕らの中では、決められた栄養成分表示に沿って並べるのが当たり前だと思っていたので、ありがたい発見でした。

西村:今回のユーザーテストでは、ユーザーの潜在ニーズを探るデプスインタビューも兼ねて行ないました。ユーザーテストはシナリオ通りにユーザーがサービスを使いこなせるかチェックポイントを設け確かめるもの。しかし、チェックポイントだけを念頭においてしまうと、ユーザーが感じた違和感を見逃しやすい。

実際、こちらが用意したチェックリストはスムーズにクリアしていたんです。それでも話す中でしっくりしていない様子があり、そこを深掘った中で見つかった課題もありました。

中長期的な施策を見据えていたからこそ、施策の変更に焦らず対応できた

root UXデザイナー 古里

古里:結果を踏まえ、もともと実施予定だった検査結果と各栄養素の詳細画面のUI変更に加え、アドバイスのパーソナライズ化を行いました。パーソナライズ化はユーザーデータが一定数以上必要なことや、実装難易度が高いことことから、中長期的に行う施策に位置付けていたんです。ですが、インタビューの中でユーザーのニーズが高いことがわかったため、できる範囲で取り組む判断になりました。

西村:パーソナライズ化の中でも課題だったのが、「テンプレートのアドバイスが送られている」という印象を与えていたことでした。ただ、文章全体のカスタマイズは今回の期間では難しい。そこで、ユーザーの条件によって文言を変更する箇所を作り、アドバイスをだし分ける仕組みを整えました。

寺田さん:パーソナライズ化は最初に施策を整理した時に、いずれ取り組むとわかっていたもの。実行した時にサービスにどんな影響があるのかやどれくらい時間がかかりそうかイメージがついていたのは良かったです。急ピッチでの開発になりましたが、必要性が明確だったからこそ、迷いなく進められました。

VitaNoteを自分ごと化する姿勢がひしひしと伝わってきた

石田さん:結果としては、リニューアル後一カ月でまだ速報値ながら、マイページの平均滞在時間は67%、マイページ内でのサプリの購買率も75%上昇しています。

改めてプロジェクトを振り返ると、最初の相談から、現状の課題だけでなく、未来のあるべき姿も一緒に考えて下さったのが非常に大きかったと感じています。本当に事業の成長を一緒に考えてくださっていることが、ひしひしと伝わってきました。

寺田さん:デザイナー視点で捉えていることを、私たちも理解できるようコミュニケーションにも気をつかっていただいていたのも印象的でした。

古里:複雑なことは図にしたり、粒度の荒い状態でもスピーディーにワイヤーフレームに落とし込んだりと視覚的なコミュニケーションを重視しました。デザインやワイヤーのやり取りはコラボレーションツールのFigmaを使って行いました。Figmaを使ったワークフローはユカシカドさんの社内にも定着したとお聞きしております。

西村:決まったことをこなすのであれば、受発注のような関係でもいいかもしれません。しかし、私たちがやるべきと考える事業成長への伴走には、事業理解はもちろん、パートナーとして関係を築きともに同じ方向を向くことが不可欠ですから。今回は関わる人が多かったので、特に意識した部分でもあります。

石田さん:丁寧に伴走いただいて、結果も出たことで、人の行動を変えるデザインの力を実感しました。また、どこかのフェーズでご一緒できたら嬉しいです。

寺田さん:自分の想像以上に、デザインで解決できることがたくさんあると学ばせていただきました。今後、サービスを伸ばす上でデザインをより活用していきたいです。

西村:我々も、いまだに関わったメンバーと勝手に購買モデルやオペレーションモデルを考えたりしていたんです(笑)。私自身、いちユーザーとしてもっと使われるようになって欲しいという想いがあることも関係しているとは思いますが、こうしたことが自然と起こるくらい、我々も目線を合わせられたのかなと思っています。

古里:今後VitaNoteがどうなっていくのか楽しみです。何に注力するにしても、またお手伝いさせていただけたらなによりですね。

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