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誰もがデザイナー 〜職種の殻を破り、チームでデザインを考えよう〜|Google Venturesからの提言 –

この記事はGVのデザインパートナー Daniel Burka氏のブログ記事を公式に許可をいただき翻訳したものです。


先日、ジャレッド・スプールが書いた「Netflixのパフォーマンスエンジニアは実はデザイナーである」という内容の記事が目に留まった。挑発的な考えだが、理にかなっている。彼の主張は、職種名に「デザイン」と書かれている人だけでなく、組織内の誰もが(パフォーマンスエンジニアも含めて)プロダクトをデザインしているというものだ。

こうした反応を見る限り、ジャレッドはあたかも何かの儀式のために赤ん坊を誘拐したかのような攻められようだ。ジャレッドは実際、なんと書いたのだろうか?

「今のチームのメンバーは、パフォーマンスエンジニアだ。アーキテクチャをつくり、エンジニアリングをし、非常に複雑なシステムのパフォーマンスを維持している。そうした仕事に、彼らはすべての時間を注ぎ込む。システムエンジニアリングにおいて、この職種以上に技術を要するものはない。

とはいえど、Netflixの視聴者のビデオ配信が停止したり、データが待機中であることを示す回転する円のアニメーションが表示されたりした瞬間、こうしたエンジニアたちは大きな変化を加える。彼らは、ユーザーエクスペリエンスデザイナーになるのだ。

私は最後の一文を太文字にした。非常に重要な点だからだ。エンジニアや営業担当、CFOもまたデザイナーになり得るという考えを快く思わないデザイナーもいる。

好むにせよ好まないにせよ、賛同するにせよしないにせよ、デザインチーム外の人々もまた、顧客に大きな影響を及ぼすようなデザインに関わる重要な選択を行っている。彼らはプロダクトを設計している。デザイナーなのだ。

挑発しているわけではなく、単に事実を述べているだけのことだ。毎年、何十ものスタートアップと一緒に仕事をしているが、どの組織においても当てはまることである。CFOは値段に関する決定をすることで、プロダクトエクスペリエンスに変化を与える。エンジニアはパフォーマンスを調整する。営業担当は顧客に伝えるメッセージを書く。私の意見では、根本的に顧客の経験に変化を及ぼす人々はみなデザイナーなのだ。

こんなにも自明な事実であるにもかかわらず、ジャレッドや私がこの点を敢えて強調する理由はなんだろう。何度も訴えてる理由は、私はデザイナーに自分の役割に対する考え方を見直し、良いデザインをよりうまく調整できるようになってもらいたいからだ。

今この瞬間も、視点をこのように変えることで、仕事の仕方がどのように変化し得るか考えてみてほしい。

誰もがデザインマインドセットが必要だ

デザインに関する決定が、自分の所属する部署以外から、職種名に「デザイン」という単語が含まれないような人々からもたらされるという事実を受けれたとき、同僚に対するアプローチの仕方を改める必要が生じるだろう。彼らはもはや単なる同僚ではなく、デザインチームの一員なのだ。

Apple や Airbnbのようなすばらしいデザインをつくっている会社は、Airbnbのデザイン担当VPのアレックス・シュライファー氏は、WIREDの取材でいかに同社がデザイン主導では “ない” かを語っている。

「(Airbnbにおける)解決策は、実はデザイナーに重点を置かないことだ。重要なのは「デザイン主導のカルチャー」をつくることじゃない。なぜなら、そうした姿勢はデザイナーではない人に対して、あなたの視点は二の次だと告げるようなものだからだ。そうなると、組織全体が、一つの特権的な見方に反応しなければならなくなる。そうではなく、より多くの人に通常はデザイナーの範疇にしかないこと、つまりユーザーの視点を大事にしてもらいたいとシュライファー氏は考えたのだ。」

誰もがデザイナーの全スキルを必要とするだろうか? 当然そんなことはない。だが、自分の決断がどのように顧客の経験に影響を与えるのかを理解するための方法を、各自が身につける必要はある。

エンジニアがパフォーマンスを削るようなことをした際、そのエンジニアはどの行為がユーザーエクスペリエンスにどのような影響を与えるか理解しなければならない。同様に、デザイナーがエンジニアに対して、パフォーマンスに影響を与えるよな変更を加えるように迫る際、エンジニアは単にデザイナーに頼まれたことを行うのではなく、デザイナーが俯瞰的に見たときにベストなデザインの決定をできるようにサポートするべきだ。すばらしいデザインを生み出すのは、こうしたお互いを尊重し合うコラボレーションなのだ。

共感を生み出す良い方法の一つは、会社のさまざまな部署の同僚と共に顧客研究に関するリサーチを見ることだ。私の同僚のマイケル・マーゴリスがGVの企業と一緒にリサーチをした際、デザイナーだけでなく、現場のチームもインタビューを見てメモを取るべきだと強調した。全員がリアルタイムで見ることが難しければ、セッションを録画して、その後に「視聴パーティー」を企画するのもいいだろう。

デザインチームの外で仕事をする

デザインは組織のあらゆる場所で起こるということを一度受け入れれば、それに対して責任を取らなくてはならない。アプリが遅い? エンジニアのチームと話し合ってみよう。マーケティングチームが、プロダクトについて将来の顧客にうまく訴えかけていない? その問題について一緒に考えたいと提案してみよう。

もちろん、会社の全メンバーと共にデザインをするのは大変だ。だが、本当にすばらしいデザイナーになりたいのであれば、必要なことだ。でなければ、誤った決断を覆い隠すだけだ。たとえば、あなたの会社のCEOが複雑な料金設定をつくったとしよう。インターフェイスと情報デザインのスキルを使って、できるだけ分かりやすい料金ページをつくることに専念することもできるだろう。だが、より難しく、そしてより重要なデザインの機会というのは、CEOと一緒にプロダクトの料金を見直すことだ。顧客に対して分りやすく、かつ事業の目標も満たすような形で。

事業の軸となる部分にフォーカスすることこそ、本当のプロダクトデザインとインターフェイスデザインやユーザーエクスペリエンスデザインとを分かつものである。根底をなすプロダクトデザインというのは、非常に大変で、骨の折れる仕事であり、またそれこそトップレベルのデザイナーが長けている部分なのだ。


「UXデザインの原理」ダン・サファー、トーマス・グレーザー

デザインチームにデザイナー以外の人を含める

デザインは大変な仕事だ。様々なスキルが必要になる(ダン・サファー氏がつくった「UX原理」の図に描かれている様々な円を見てみてほしい)。デザインをマスターするには、何年もの実践がもとめられる。

だからこそ、多くのデザイナーは、デザイナー以外の人がデザインの仕事をしたり、ジャレッドや私が彼らを「デザイナー」と呼んだりすると、気分を害する。気分を害するのは勝手だが、現実はあなたの存在があってもなくても、ほかの人もまたデザインに関わる決定を下しているのだ。彼らを受け入れよう。彼らの存在によって、あなたの仕事の価値が低くなるわけではない。あなたのデザイナーという職種名の意味がなくなるわけではない。

より多くの人を巻き込んでデザインをするのは、やみつきになる。ライバルが増えるのではない。デザインをする人が増えれば、デザインチームやプロダクトはさらに強力になるはずだ。ユニークな視点が取り入れられるのだから。デザイナーではない人々のスキルの向上に協力し、彼らの専門知識をプロダクトと会社の発展にために活用しよう。

より良い未来を一緒につくろう

数年前、Fortune 500に入っているある企業の役員と会った。彼女に自分がデザイナーであることを告げると、彼女の目は輝いた。「私もデザインが大好きなんです!」と彼女は言って、こう続けた。「私の部署は、デザインチームと同じフロアにありますよ。彼らはクリエイティブな仕事をたくさんしています。」

私の心は沈んだ。デザインチームは、ただ役員と同じフロアにいるだけで、彼らは一緒に仕事をしていなかった。デザイナーたちは防音加工がされたガラス壁の部屋の中で、他の部署からは隔離された「クリエイティブな仕事」をしていた。

この役員の女性は、顧客に影響を及ぼすような決断を毎日していた。彼女はデザイナーにアプローチしない責任の一部を負っている。だが、一番の責任はデザインチームにあるだろう。事業のもっとも重要な挑戦の一部について、一緒に取り組みたいとアプローチする機会を活用していないのだから。

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すばらしい記事を書いてくれたジャレッド・M・スプール、編集と助言をしてくれたジョン・ゼラトスキ、ニック・ブルカ、マイケル・マルゴリス、そしてWIREDですばらしいインタビューをしてくれたアレックス・シュライファーに感謝したい。

原文: Everyone is a designer. Get over it.
翻訳者: 佐藤ゆき

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