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デザイン組織づくりにおける育成・マネジメントの考え方とは?   root Design Meetup vol.2

rootは、2020年8月から事業の成長フェーズにおける課題に対して、ゲストを迎えてディスカッションするトークイベント「root Design Meetup」をスタートしました。

第1回はUX負債についてをテーマにし、第2回は、コロナ禍におけるデザイナーの育成やマネジメントをテーマに、株式会社アジケの代表取締役 梅本周作さんをゲストにお招きしました。本記事ではその内容を中心にレポートしていきます。

フルリモートのなかで、雑談を生み一人ひとりの状況を見える化する

まず、イベントのタイトルにもある「コロナ禍」において、組織や働き方にどのような変化があったかについてから話題はスタート。両社ともにフルリモートの体制へと移行しており、アジケでは2月の中旬ごろから、rootでは3月ごろから働き方が変わっています。フルリモート体制でチームで働く難しさについて二人が語ります。

西村:オンラインになって、目的がないとコミュニケーションをとらなくなってしまい、待っているだけだと情報が全然流れてこない。マネジメント側から能動的に情報を取りに行く動きをしていないと様子を把握できないし、これまではオフィスという場所に行けばなんとなく把握できていたメンバーの動きが全く見えない状態は辛いですね。

梅本:自分の脳みそだけで仕事をしようとするような難しさですよね。今までであれば、他人の脳みそをちょっと借りることができていた。だれかとのコラボレーションや人との雑談。良いアイデアはそういったところからでてくるので、その機会が圧倒的に減っているのは悩ましいところです。

クリエイティブな仕事をする上での雑談の重要性について触れる梅本さん。アジケでは、社内で雑談が生まれるように、様々な場やツールを試しているといいます。

梅本:毎朝10時から、経営層と15分程度雑談する時間を設けています。そして10時半からは全体朝礼のようなZoom会議を。全体朝礼ではまずラジオ体操をして、毎日1人ずつ交代で24時間以内にあった新しいことや良いことを発表します。コーヒーブレイクのような機会も設けてみています。他にもカメラをオフにしていても在席しているかがわかる「IRU」というサービスや疑似オフィスを体験できるツールを導入して、雑談を生み出すための工夫をしていますね。

西村:なるほど。rootでは最近、社長である僕が音声配信をしています。週に1回1時間ほど時間の枠と週ごとの司会だけ決めて、フリートークをしている様子をただ流しています。内容のイメージとしては、このイベントみたいな感じですね。他のメンバーは聞き流してるだけでもいいですし、気になる話題があれば会話に参加してもらってもいい。そんな感じに僕からコミュニケーションできる機会をつくりにいく取り組みをしています。

育成の仕組みづくりは言語化からはじめる

両チームともコロナ禍で働く場所や環境が変わり、伴ってコミュニケーションのとり方が変わっています。働き方が変われば、どう成長していくのかもこれまでとは異なってきます。マネジメント層としては、メンバーに対して、成長のイメージを共有していくためにどのような工夫が必要なのでしょうか。

梅本:アジケでは10年といった長期の目標も掲げていますが、長期目標は抽象度も不確実性も高いため、イメージできる粒度までブレイクダウンした2年程度の目標も存在します。スタッフ1人ひとりが2年の目標達成へ役割を担って向かえるように、それぞれの目標設定を行っています。

以下の図はアジケ社内で共有している概念図です。デザイン組織を経営するための資産を5階層にわけており、下にある組織文化や価値観ほど容易には変えられません。アジケでは下2つの階層をベースに、上位3階層に対して具体的な課題や施策を導き、だれがいつ何をするかといったことを明示する戦略マップまで落とし込んでいます。

西村:会社のミッションが、どう自分のチームや部署と紐付くのか、整理されている会社は少ないのではないかと思っています。いま、共有いただいた図でいうと、ミッションと紐付いていなければ、人の関心は一番上にある「スキル・ツール」へ意識がいってしまいがちです。梅本さんのように、個人やチームと会社の関係性を言語化して整理していく方法はデザイン会社、事業会社どちらにとっても役に立ちそうですね。

デザイン組織をつくっていくために、デザイナーをどう評価・育成するべきか?

梅本さんは自社の経営者としてだけでなく、外部CXOとしてデザイナーを育成・マネジメントした経験をお持ちです。自社への取り組みと、外部CXOとしての取り組みに違いはあったのでしょうか。外部CXOの仕事について、梅本さんは以下のように語りました。

梅本:CXO就任のきっかけは、デザイン組織を中でつくりたい、もしくはデザイン組織をもっとうまくワークさせたいという相談をもらったことでした。業務フローを変えたり、必要なスキルセットを明らかにしたり、デザイナーの評価や1on1にも取り組みました。取り組みは様々なハードルがありましたが、とくに業務フロー変更は難色を示される方も結構いらっしゃったと思います。

企業がもつ文化やミッションは変えられません。しかし、プロジェクトに対するミッションやビジョン、さらに上位にある「どこを評価していくか」、「どんなスキルを身に着けていくべきか」という点は設計することが可能です。

特にデザイナーの評価については、知見のある人材が内部におらず、仕組み自体がつくれないという課題を抱えている組織も少なくないと梅本さんは語ります。

梅本:評価の仕方がわからず、他の職種と同じ評価制度を採用されている会社さんも多いんじゃないかと思います。評価制度がクリエーターに適したものになっていなければ、クリエーターの方が何をすれば評価されるかわからないという状況になってしまいます。たとえば良いデザインをつくってきたら評価するというのも、1つの評価基準だとは思うんですが、それだけでは成長のステップが見えてこないですよね。

アジケ社内では、UXの5段階モデルのフレームワークを評価・目標制度へとりいれることで成長へのステップまで明示しているといいます。

梅本:UXモデルの5段階モデルをベースに、スキルマップを作成しています。表層のレベル1だったらこういうことができるようになってほしい、レベル5にいけばいくほど評価があがるといったイメージで、メンバーそれぞれに合わせて目標を明示するようにしています。

西村:課題を無作為に解決しようとすると、階層を意識することなく動いてしまい、やっていることがうまくかみ合わないといった現象は、組織課題を解決しようとする場面でよく起こる問題ですよね。そういう場面でこういった型やフレームを意識することは、事業会社・デザイン会社関係なく参考になるのかなと思いました。

UXの5階層モデルの最も抽象度の高いレイヤーは「戦略」にあたります。デザイナーを戦略まで考えられるような人材へと育てていくためのポイントについても話されました。

梅本:弊社には入社して5〜6年目くらいのデザイナーがいます。そのメンバーは最初、紙のデザイナーだったんですね。入社して徐々に仕事に触れていく中で、目標を達成して成果をだそうと学習して、どんどん五層の下の方に食い込んできたということがありました。トライする仕事における視座やスキル感は、デザイナーの成長に影響するんじゃないかと思っています。各メンバーにどうプロジェクトを采配していくかは育成のポイントかもしれません。

西村:興味関心が前提にあれば、きっかけを与えることでどんどん勝手に視野が広がっていく経験は弊社のメンバーでもあったように思います。なので、その人が完全にやれることしか存在しないプロジェクトにはアサインしないようにしています。トライすればできそうなことがあるプロジェクトへアサインするようにして、チャレンジしてもらおうと意識しています。トライすればできそうなことの塩梅が難しく、課題が出てくることもありますが成長にはある程度のストレッチが重要だと考えていますね。

ミッションに対して共犯関係を築くことがマネージャー育成の第一歩

育成というテーマに続いて話されたのは、デザイナーのマネジメントについて。梅本さんは「貞観政要」という古典を座右の書として、マネジメントを考えていると語ります。

梅本:「貞観政要」の太宗をみならって、一度人に任せたら任せた領域は絶対に口をださないと決めています。任せ方については3つあると考えています。1つ目は、権限や予算や人材をつけて権限のなかで好きにやってもらう範囲を定める方法。2つ目は、自分の仕事の一部をやってもらうという任せ方。デザインシステムをつくりこんでいく中で量産する作業の一部をやってもらうといったイメージです。最後は、自分の仕事そのものを代行してもらうこと。

西村:伝達しなければいけないことがなんなのかを自覚しておく必要があることを感じました。要求をある程度明確に言語化してちゃんと伝えることができなければ、意思疎通はなかなかうまくいきません。フルリモート下で、直接コミュニケーションがとれない中で暗黙知をベースになにかをお願いする方法は、うまくいかないパターンの典型になってきているような気がしますね。さらに上手くワークしてもらうためには、相手のモチベーションをあげるようなコミュニケーションが必要です。

後半のQAセッションでは、制作物の質を担保するためのデザインレビューの任せ方について質問があがりました。こちらも要求の言語化が重要であると梅本さんは語ります。

梅本:レビューをお願いしているデザイナーに、何を任せたいのかという部分を言語化して伝えることが重要です。具体的には、期限と優先度と目的や背景、あと求める品質をきちんと言語化できているかどうか、以上が先輩デザイナーの関与する場所を決めるポイントなんじゃないでしょうか。任せる部分が曖昧だと、先輩がやるべきデザインレビュー自体の範囲も定まらないですよね。

アジケではデザイナーからステップアップしてマネージャーになった方が3名いらっしゃるそうです。任せることがマネジメント層育成のヒントにも通ずると梅本さんは語ります。

梅本:マネジメントをお願いしたい方には、徐々に裁量をもたせて自発的にある程度の責任を持ってもらいます。自由度をあげる分、責任をもって判断してもらう役割を渡していくように意識します。共犯関係にしていくようなイメージです。

プレイヤーからマネジメント層へとステップアップする中で、組織にはどのような課題が生じるのでしょうか。梅本さんは過去の経験から起こりがちな課題について共有します。

梅本:初期にマネージャーを担当する中で起こりがちなのが、「嫌われたくない」「仲良くやりたい」といった動機が全面に出てしまい、部下に依頼をしきれない場面ですね。本人の頭では「こういうことをやりたい」としっかり考えているにも関わらず、メンバーに対しては「やりませんか?」というやんわりした問いかけになってしまう。うまく巻き込む方法がつかめず、四苦八苦してる様子は見られますね。

プレイヤーであれば1pxにこだわったり、照明のライティングにこだわったりが大事です。でもマネージャーはプレイヤーとは違います。その意識の切り替えが難しく、5人のメンバーをマネジメントしなければいけないときに、5人全員に自分とおなじ品質を期待して悩んでしまうことも多いように感じます。期待値が自分基準になってしまうパターンですね。

デザインにおいても、プレイヤーとマネージャーは違う。そう語る梅本さんは、どのようにデザイナーの中から、マネジメントに向いていそうな人を見極めているのでしょうか。

梅本:会社の成長と自分の成長の結びつきに共感してくれる人は、マネジメント方面で力を発揮してくれる気がしていますね。なので、さきほどお話した共犯関係についても、役割をいきなり与えるというよりは、会社としてめざしている方向が整理された上ででてきた課題に対して関心を持って一緒にやろうという姿勢になってくれる人を巻き込んでいけるかを大切にしています。

西村:これは事業会社でも活かせそうな考え方ですね。組織のミッションをどう実現するかチームで考え、具体化していくなかで積極的に関わってくれる人を巻き込んでいくことが、第2、第3のマネージャーを誕生させることへつながっていくんですね。

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