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多様化するデザインの価値。デザイナーはどうキャリアを積み重ねるべきか〜Service Design Night vol.6 〜

2018年3月28日(木)、3331アーツ千代田にて「Service Design Night vol.6 デザイナーのキャリアと働き方 〜バックグランドから紐解くデザイナー像〜」が開催されました。

Service Design Nightは、デザイナーをはじめ、事業開発やプロダクト開発に関わる方向けに、スキルやノウハウを共有し、参加者同士の繋がりを広げるイベント。Webサービス開発に特化したデザインコンサルティングと、制作を手がける株式会社ルートが主催しています。

第6回目となる今回は、デザイナーのキャリアと働き方にフォーカス。デザイナーの役割が多様化する中、どうキャリア形成をしていくのか、理想とする働き方をどう実現していくかを考えていきます。

今回登壇されたのは多様なキャリアを歩まれてきた、4名のデザイナーの方々。株式会社メドレー デザイナーの小山敬介さん、株式会社ルート チーフUIデザイナーの古里祐哉、コイニー株式会社 リードデザイナーの松本隆応さん、THE GUILD デザイナーの三古達也さんです。モデレーターはinquire inc CEOのモリジュンヤさんが務めました。

多様なキャリアを歩んできた4名が登壇


株式会社メドレー デザイナー 小山敬介さん

イベント前半は、登壇者それぞれの自己紹介を兼ねたキャリアについてのプレゼンテーションが行われました。一人目に登壇したのは、メドレー デザイナーの小山敬介さんです。

メドレーは、医療ヘルスケア分野のスタートアップ。小山さんは、空間デザインの仕事の後、デザイン会社で7年弱UIデザインに従事。メドレーへ転職したのは、前職で母子手帳のアプリUIに携わったことがきっかけだったといいます。

小山:受託会社では様々なデザインを提案します。デザインが次々と作られていく中で、ユーザーの課題を解決していることをもっと感じていたいと思い、また感じるためには突き詰めて1つのデザインに向き合わないといけないと感じ、メドレーへの転職を決意しました。


株式会社ルート チーフUIデザイナー 古里祐哉

二人目は、rootチーフUIデザイナーの古里祐哉さん。本イベントの主催でもあるrootはUI/UXの領域に特化したデザイン会社。プロダクト戦略、UI/UXデザイン、組織デザインの3つを軸にデザインを行う会社です。古里さんがrootに転職したのは、前職での圧倒的な経験不足を感じたからでした。

古里:僕のファーストキャリアはECプラットフォームの『BASE』でした。アシスタントデザイナーとして働いていたのですが、スキルが足らず、担当するのは小さなUI改善ばかり。デザインを言語化することもうまくできず、苦しんでいました。その頃に同僚だった三古さんから「デザイン会社で修行したほう
がいい」といわれ、転職を決意。10社受けて一つも決まらず、これで最後と思った11社目で代表の西村と出会い、入社することになりました。


コイニー株式会社 リードデザイナーの松本隆応さん

三人目は、コイニー リードデザイナーの松本隆応さん。コイニーはスマホやタブレットで簡単に決済ができるモバイル決済サービス。松本さんは5年ほど広告制作会社で働いた後、ゼロからデザインに携われる環境を探し、コイニーの創業期からジョインしました。

松本:コイニーでは、サービスに関するデザインから会社の組織デザインなどプロダクトと組織のデザイン双方に携わっています。サービス側では、アプリやWebのUI、事業者向けのマニュアルなどさまざまなデザインを。組織側では、会社自体のミッションを表す言葉を作り、組織に透させるために、評価制度や行動指針に落とし込むことも行ってきました。

他にも、松本さんは個人としても複数のスタートアップに参画しながら、ビジネス・開発なども含めて幅広い領域に携わり、エグジットなどの経験もされています。

THE GUILD デザイナーの三古達也さん

四人目は、THE GUILD デザイナーの三古達也さん。THE GUILDはさまざまな会社・クリエイターで構成されたギルド型組織のデザインファームです。三古さんは、エウレカのインターンとしてキャリアをスタート。制作会社を経てBASEに入社し、アプリのデザインを担当した後、決済事業を展開するPAYのチームへ転籍。デザインの土台作りをした後、THE GUILDへ転職しました。

三古:現在はデザインだけでなく、UXや数値解析など日々多様な領域に携わり勉強させてもらっています。THE GUILDは社内にすごい人がたくさんおり、常に自分の今後を強く意識させられる。それもあって最近はフリーランスとしての活動も広げています。

自分が挑むべきもの、成長できること——それぞれの転職の軸

現職までのキャリアの話を聞いた後、後半のパネルトークへ。前半で話された内容を踏まえて、キャリアに対する考え方を紐解いていきます。まず話されたのが「転職の時に考えたこと」。最近、転職された三古さん、小山さんの話を軸に展開されていきました。

小山:自分がどのような課題解決をしたいかを大切にしました。その中でメドレーは「医療ヘルスケア分野の課題を解決する」をコーポレートミッションに置き、課題解決を第一に置く覚悟を感じました。加えて社内には医師やデザイナーなど含め、課題解決を目指すプロがいる。突き詰めて考えられる環境があると思い入社しました。

三古:僕の場合、大きく2つ軸を考えていました。ひとつは、BASEで2年半ずっとデザイナーが一人だったので他のデザイナーと一緒に仕事したいということ。もうひとつは成長できる環境です。BASEは社内に3人しかデザイナーおらず、UIは僕だけだったので社内で自分を相対化できなかった。力のあるデザイナーたちの中でもまれようと思っていました。

モデレーターを務めたinquire inc CEO モリジュンヤさん

モリ:直近で携わっていたPAYなど、FinTechは事業領域としても注目を集めていますが、その領域の中で転職する選択肢はなかったんですか?
三古:正直、FinTechは考えました。ただ同じ領域の事業ばかりを見ていると考え方が凝り固まってしまいそうで。特定の業界だけを考え続けるのはちょっと怖いと思い、今回は別の領域を選びました。

モリ:なるほど、そういった意味では松本さんはコイニーに長く携わっていますが、他のデザインをやりたいと思ったことはないのでしょうか?

松本:あります。とくにコイニーは1つのプロダクトで成長してきているので、いまから新規でプロダクトをやる感じではありません。それがきっかけで、個人の仕事も力を入れるようになりましたね。

組織ごとにことなるデザイナーが大切にすること

続くテーマは、「今実践しているデザイン業務」。それぞれ異なるポジションで異なる形でデザインに携わっていますが、どのような特徴があるのか。それぞれの話を伺っていきます。

古里:rootでは「ソリューションの検証」を重要視しています。クライアントの要件を鵜呑みにしてデザイン制作するのではなく、「誰の課題を解決したいのか?」「なぜその解決方法なのか?」「それは検証済みなのか?」というヒアリングをプロジェクトをスタートする前に行ないます。

検証済みであればなおさらですが、未検証の場合でも仮説の精度を上げることができれば、チームが同じ方向を向いて開発できます。
新規事業立ち上げプロジェクトが多いので、チームビルディングの観点でも重要だと考えています。

松本:現在コイニーは僕を含めてデザイナーが3名。それぞれが幅広い専門領域を持つプロフェッショナルなので、得意なものを組み合わせ柔軟にデザインをできる。デザインだけにとどまらないことが多いですね。コイニーで大切にしているのはUIなどの表層的なデザインだけで問題解決しようとしないことですね。デザイナーがハブとなり、他チームとうまく連携することで、より良い解決策が見つかり、それがサービス体験全体の最適化にもつながると考えています。

モリ:同じ事業会社のメドレーはいかがでしょう?

小山:メドレーは全社員250人中150人くらいが、僕が携わる「JobMedley」の部門なんですが、デザイナーは僕一人。人手が足りておらず、やるべきことの優先順位が大切になっています。ただ、PMとコミュニケーションを取りつつ進めていれば基本問題ないやりやすい環境にはありますね。

強いて言うなら社内の人がみんな目が肥えていて、デザインに厳しいんですよ(笑)。それはそれで楽しくやらせてもらっています。また他の事業を担当している2人のデザイナーともコミュニケーションすることで、他の事業から見た全く違う観点を参考に改善を日々行なっています。

モリ:THE GUILDはどうでしょう?組織体がユニークなので他社とはまた異なる感じかなと思いますが。

三古:僕は今、THE GUILDのコアメンバーの人たちについて仕事をしています。 というのも僕のミッションは、皆をつなぐ架け橋になることだから。元々、THE GUILDは自分で会社もっている人とかフリーランスの集合体なので、横のつながりが弱いという課題があったんです。ただ、本当に多様な案件があるので、難しさとともに学びもかなりある。たとえば色盲の人向けのデザインをしている人がいるんですが、そのノウハウは非常に貴重なものだと思うんです。

5年後、デザイナーはデザイナーでなくなる?

最後のテーマは、「5年後どうなっていたいか」。四者四様のキャリアを歩まれている登壇者の面々ですが、現在の経験を生かし、次は何をデザインしていくのか。デザインが携わる領域が広がるからこそ、気になる問いをそれぞれに聞いていきます。

三古:THE GUILDのコアメンバーで一番年齢が若い方が僕の5つ年上。5年後の自分がプレーヤーとして追いつくことをまずは目標にしています。そのためにもプロフェッショナル集団のTHE GUILDの名に恥じないよう、デザインはもちろん、プログラミングやビジネスなど複合的なスキルを身につけたいですね。

松本:もう少しデザインの力を社会に向けられるようになっていきたいですね。少し前はデザイナー同士で作品を評価し合っていればそれで充分でしたが、今は経営の領域まで踏み込んで考えることが求められていると思います。これをもう一歩進めて社会の領域まで考えていけるようになると良いなと。NPOや社会課題を解決している人をデザイン面からサポートする会社などを立ち上げたいと思っています。

古里:僕は、デザイナーという肩書きを捨てたいと思っています。「サービスを作る人。強み:デザイン」みたいなイメージです。デザイン×経営や、デザイン×新規事業立ち上げといった、デザインを軸に事業にコミットしていく姿を目指したいと思っています。

小山:5年前を振り返ると、技術を高めるためにとにかく手を動かしていました。それが今は、先にある未来について深く突き詰めるために、考える時間が長くなりました。もう5年後を想像してみると、おそらく“考えること”がメインになると思います。そのときは経営や、医療の現場や、それを中心とした周辺の環境など、デザインを軸にしながらもその枠組みに縛られない仕事にもつながり、いい意味でデザインと離れていきたいと思っています。

四者ともデザインに軸足は置きつつも、デザイン以外の領域も含め拡大していきたいという意思ある回答をいただきました。

デザイン自体の領域や役割、可能性が広がるいま、デザイナーのキャリアも多様化しています。今回さまざまな経験を持ち、さまざまな領域に挑む登壇者の皆様から話を伺いましたが、改めてキャリアをどう積み上げていくかを自分で考え抜くことの重要性が明らかになったようにも思います。

自分は何をやるべきなのか、自分が今後デザインを通して何をなしたいのか、数年後どのような姿をえがけるのか、など。多様な選択肢があるからこそ、自身で選び抜く意思をもつことこそが大切なのではないでしょうか。


最後に懇親会を行い交流を深めました。

執筆:小山 和之
Photo: NATA

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